照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

杉原千畝から根井三郎、市井の人々、そして小辻節三へと引き継がれた命のビザ

(凄い人がいたものだ)と、『命のビザを繋いだ男 小辻節三とユダヤ難民』(山田純大著・NHK出版・2013年)を読み終えて暫くは、その偉業にただ感服していた。そして、乏しい資料を手繰りながら、丹念に小辻節三という人物の足跡を追い続け、本として結実させた…

縄文時代から人は何をどのように食べてきたか〜『食の考古学』が興味深い

題名が気になりたまたま手に取った『食の考古学』(佐原真著・東京大学出版会・1996年)が、予想以上に面白かった。第一章(豚・鶏・茸・野菜)から、第二章(米と塩)、第三章(煮るか蒸すか)、第四章(肉食と生食)までの、縄文時代から以降、人々が何をどのように…

家族の肖像としても興味深く読める『ライト兄弟』

『ライト兄弟』(デヴィッド・マカルー著・秋山勝訳・草思社・2017年)は、有人動力飛行に世界で初めて成功したウィルバーとオーヴィルを軸に、後半は妹のキャサリンも加わった一家の物語で、彼らが互いにやり取りした手紙を主として組み立てられている。 ライ…

都知事の“鉄の天井”発言に違和感〜ただ本人のメッキが剥がれただけではないのか

小池都知事が滞在中のパリで、前駐日大使のキャロライン・ケネディ氏と対談した折に発したという言葉“鉄の天井”に、〈何勘違いしてるの、ただメッキが剥がれただけでしょう〉と心底呆れてしまった。 10/23付のYahoo!ニュースによると、 “「都知事に当選して…

未知の世界への扉が開かれる〜『謎の独立国家ソマリランド』と『恋するソマリア』

(これは目から鱗がバッサバッサだわ)と、『謎の独立国家ソマリランド』(高野秀行著・集英社文庫・2017年)を読み終えた直後はただ驚嘆していたけれど、よく考えればそれ以前の問題であった。目から鱗どころか、だいたいが何も見てもいなかったのだ。ソマリア…

Cafe 皇宮の森〜手作りトコロテンと都農(つの)町のトマトにとりわけ感激

三色の曼珠沙華 カフェ皇宮の森(宮崎市)でのランチ、玄関のドアを開けたら、お出迎えしてくれたのは三色の曼珠沙華たちだ。宮崎を訪ねたのは曼珠沙華真っ盛りのお彼岸の頃であったが、こちらでは、赤に混じってクリーム色(あるいは白)の花が目についた。個人…

読後、身体中から元気と勇気と活力が湧いてくる『バッタを倒しにアフリカへ』

『バッタを倒しにアフリカへ』(前野ウルド浩太郎著・光文社新書・2017年)、一体何の本?と題名に戸惑うばかりか、バッタに扮した著者の写真に、単なる面白本か何かと、書店で目にしても手に取ることはなかったこの本も、実は次男からの譲り受けだ。 だが、読…

美味しいうなぎとユーモラスな絵にお腹も心も満足〜本部うなぎ屋さん(西都市)

伊東マンショの生地・都於郡(宮崎県)を訪ねた後の楽しみは、同じく西都市内にある本部うなぎ屋さんでのランチだ。前回初めて伺った折はうな重だったが、今回は、うなぎをたっぷり食べたかったのでうな重(特)にした。但し、御飯は半分でとお願いしたので、お…

天正遣欧使節・伊東マンショの生地都於郡(トノコオリ)を訪ねて〜宮崎・西都市

昨年2月に宮崎に行った折、西都市出身の友人が、古事記に所縁の場所を案内してくれながら、ついでのように、「伊東マンショもここの出身なのよ」と言った時は全くびっくりしてしまった。私としては、どうして伊東マンショ知ってるのであるが、友人からすれば…

かつて学問と文化の中心地だったトンブクトゥ〜アフリカへの認識が変わる本

『アルカイダから古文書を守った図書館員』(ジョシュア・ハマー著・横山あゆみ訳・紀伊国屋書店・2017年)が、非常に読み応えがあって面白かった。旅行から帰った次男が私にくれた本だが、多分、自分では巡り合えなかった一冊だ。 何といっても、500年以上も…

やっぱりブリューゲルの絵はいいな『ブリューゲル探訪 民衆文化のエネルギー』

ブリューゲルかと書架から取り出した本(『ブリューゲル探訪 民衆文化のエネルギー』森洋子著・未來社・2008年)の表紙を見て驚いた。 本の表紙 (『農民の婚礼』部分) 中央には、ほんのり頬を染めた花嫁が幸せそうな笑みを浮かべて座っているではないか。あの…

ボクはエムエム1歳〜今日トラ子さんが来たよ

今日トラ子さんが来たよ。一緒に遊んで、とても楽しかった。 お昼寝から目が覚めたボクは、ハイハイしてお部屋から出たの。するとリビングのドアが開いていて、玄関の方から声が聞こえたんだ。ボクがそっちに顔を向けると、ママと誰か知らない人がいて、ボク…

曼珠沙華を見逃したかと焦ったけれど〜いつもの場所でいつものように咲いた花

この1週間ばかり、どこを歩いていても曼珠沙華が目を惹く。スッと伸びた茎の先に、大きく紅い花が鮮やかだ。アラッ?こんなところにもと、思いがけない場所から顔をのぞかせている花に目を留め、早速自分の曼珠沙華地図に加えておく。といっても、記憶の中だ…

ミケランジェロの《最後の審判》に手が加えられていたなんてビックリ!

この5月に、バルセロナのカテドラルとエヴォラの博物館で「受胎告知」を見た時、驚きを顕わにする(ように見えた)マリアの表情に、どちらもずいぶん似た雰囲気だなと思った。これまでも各地の教会や美術館を訪れるたび、「受胎告知」でマリアがどのように描か…

ヨルダン土産のデーツはちょうど干し柿のような味〜美味しい

デーツ(ナツメヤシ) 箱と共に デーツ ヨルダン土産のデーツ(乾燥ナツメヤシ)、私は初めて食べたのだがとっても美味しい。この味には覚えがあるが、はて何だったかなと2つ目を口に入れているうちに、そうだ干し柿だと思い出した。ねっとりとした濃い甘さだけ…

噂に惑わされず、さらに惑わす側にならないためにはどうすべきか

寺田寅彦が、関東大震災が起きた翌年の1923年9月に、流言蜚語の伝播を燃焼の伝播になぞらえ、それらが広まることへの責任は市民自身にあると書いていたと知り、早速その文を読んでみた。 ちなみに、寺田寅彦って誰?と思われるかもしれないが、正直私も、詳…

スキピオ・アフリカヌスにはつい肩入れしたくなる〜『ローマ人の物語』

未読であった『ローマ人の物語 』(塩野七生著・新潮文庫)のうち、「ローマは一日にしてならず(上・下)」と「ハンニバル戦記(上・中・下)」が面白くて、一気に読んでしまった。 象を連れたハンニバルのアルプス越えは聞いたことがあっても、何のためにそんな…

勉強に気乗りがしない、もしくはすぐに飽きちゃう場合〜この方法をぜひどうぞ

自宅では気が散るから図書館で勉強しようといざ出かけてはみたものの、何だかイマイチ気乗りしないなぁ、もしくは、30分くらいで早くも飽きちゃったなという時、気分転換とばかりにスマホをのぞくのは絶対にダメ。 結局、机に向かっている時間の大半をスマホ…

西洋音楽を学んでいた天正遣欧使節の少年たち〜『クアトロ・ラガッツィ』

エヴォラ(ポルトガル)のカテドラルでパイプオルガンを目にした時、日本語の案内板には、確か、日本から派遣された少年使節が「聴いた」とのみあったはずだが、その後ブログ等で、この楽器を演奏したという記述をいくつも見かけ、それは本当だろうかとほとん…

普段は海賊、時に応じて海軍の一員って?『ローマ亡き後の地中海世界 』

"人間世界を考えれば、残念なことではある。だが、戦争の熱を冷ますのは、平和を求める人の声ではなく、ミもフタもない言い方をすれば、カネの流れが止まったときではないか、と思ったりする。"( 『ローマ亡き後の地中海世界 海賊、そして海軍 4』塩野七生著…

『ハイドリヒを撃て』という映画の紹介に、アラララ??となってしまった件

『ローマ亡き後の地中海世界 海賊、そして海軍』全4巻(塩野七生著・新潮文庫)を読み、ローマ帝国が消滅した後、(国として海賊対策をしていたヴェネツィアは別として)地中海沿岸に住む人々が約千年という永きに渡って海賊に悩まされ続けたということを知るに…

幾つになってもオシャレがしたい〜でもある世代以上には着たい服がない現実に

本屋さんでパラパラと本を捲っていたら、"おばあちゃん大国'という文字が目に飛び込んできた。65歳以上の高齢女性の割合にびっくりしたが、確かに、街中にはおばあちゃんたちが溢れている感がある。しかもあと少しすると女性の2人に1人が50歳以上になるとい…

500年以上も前にパッケージツアーを催行していたとは!〜『水の都の物語』

念願の聖地巡礼を果たしたミラノ公国の官吏サント・ブラスカが、帰国から三ヵ月後に出版した旅行記を中心に、当時のヴェネツィアの観光政策を絡めた「第九話 聖地巡礼パック旅行」がとても興味深い。"(『海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年 4』塩野七…

フン族から逃れて沼沢地に移り住んだヴェネツィアの民〜『海の都の物語』

"「アッティラが、攻めてくる!」「フン族がやってくる!」"(『海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年 1』塩野七生・新潮文庫・P・18)"と、西ローマ帝国末期に、蛮族中の蛮族と恐れられたフン族から逃れようと沼沢地に住むという選択をしたことから始まっ…

自分なりのスタイルを持てるかどうかが人の生き方を決定づける〜スティリコの場合

『ローマ人の物語 ローマ世界の終焉[下]43』(塩野七生・新潮文庫)までを、ユリウス・カエサル以前の7巻を残して読み終えた。 その直後私の胸に去来したのは、もちろん全員がそうだったとはいえないが、概して、皇帝というのは大変な仕事だったんだなという…

リスボンでうどんが食べたくなって〜結局、帰国の翌朝五反田・おにやんまへ

旅行から帰った翌日の朝、うどんを食べに五反田のおにやんまに向かった。ちょうど2ヶ月前、旅の最終地リスボンに着いたらうどんを食べようと楽しみにしていたのだが、ランチで訪れたAron Sushiのメニューにうどんはなかった。それで、帰国したらまずうどんと…

若桑みどり描く天正遣欧使節の4人の少年たち

図書館で、『ローマ人の物語』さあ次はどれを借りようかと書架を眺めていて、ふいと横に目をやると、若桑みどりの名が目に入った。どんな本だろうとタイトルを見れば、『クアトロ・ラガッツィ 天正少年使節と世界帝国(上・下)』(若桑みどり著・集英社文庫・2…

メリダでローマ遺跡をみたのをきっかけに関心は古代ローマへと

今、スペイン語学習と並行して熱中しているのが、『ローマ人の物語』(塩野七生著・新潮文庫)だ。メリダ(スペイン)で数々のローマ遺跡に触れ、どうしてここにこれほど見事なローマ劇場や円形劇場が作られたのだろうという疑問が発端だ。 私には、古代ローマに…

俄か勉強だけでは限界がある〜というわけでただいまスペイン語学習に奮闘中

マドリッドでのことだ。朝9時過ぎ、宿を出て地下鉄のアントン・マルティン駅に向かう途中、乗る前に朝食をと思い立って、近くのバルに寄ってみた。角にある店は、間口は狭いが奥行きがある。入り口近くのショーケースには、お決まりのスペイン風クロワッサン…

ただウロウロしたあげく〜無駄にリスボンを乗り尽くそうの日になっちゃったよ

国立古美術館へ行こうとフィゲイラ広場から市電15番線に乗車したのだが、ベレン方面を目指す観光客で車内はかなりの混雑だ。運よく座れた私は、途中で立つのももったいなく思われ、10時の開館には間があるし 、どうせならベレンまで行っちゃえとなった。 そ…