照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

アムステルダムからブリュッセル(ベルギー)へ〜ついでにブルージュもちょこっと

 アムステルダム中央駅からブリュッセルまで約3時間。赤、白、黄色と、童謡の歌詞そのままに列をなして広がるチューリップ畑に息を呑み、風車に旅情を掻き立てられる。

 

デルフトにフェルメールを思い、アントワープでは、ネロの憧れ続けたルーベンスが頭を過る。初めての駅を通過する度、降り立つことのない街の記憶を留めようと目を凝らす。


昼前にホテル へチェックインすると、休館は承知で、でも、休日なのでもしかすると開いているかなとの期待もあって、ベルギー王立美術館へ場所確認をかねてぶらぶらと歩いて行く。やはり閉まっていた。

 

それならブルージュへ行こうと、思い立ったまま駅へ向かう。往復切符を買ってから、さてホームはどこかと探すが聞いた方が早そうだと、ちょうど歩いて来た女子高校生らしき二人組に尋ねる。おかげで、発車直前の列車へ乗り込むことができた。水しか持っていなかったが、1時間の辛抱と空腹感を風景へと逸らす。


ブルージュは、駅を出た途端からすでに初詣状態である。道順が分からなくても、人波についていけば着いてしまう。雑誌で目にした事のあるベギン会修道院は、写真そのままでひっそりと落ち着いた印象だ。

 

通りがかりの店に入り、遅い昼食を済ませがてらしばし足休めをする。陽射しのあるテラス席は人気だが、広い店内にいるのは私一人だ。ドア一枚隔てただけで、外の賑わいとはうって変わって静けさが漂う。

 

窓から行き交う観光客を眺めていると、突然観光馬車が走って来た。料金でトラブルでもあったのか、御者と客が口論している。ご主人に加勢して、奥さんも後ろから御者の頭を殴っている。凄いなあと、びっくりする。

 

さすが子どもたちは見ているだけだが、興奮している両親の状況をどう思っているだろうと、少し気になる。結局、支払いはどうなったのか分からないが、家族4人は、逃げるように馬車から降りて行ってしまった。

 

こんな時、テラス席にいなくて良かったと思いながら、席を立つ。芝居を見ているのとはわけが違う。こんな臨場感は、迫力があり過ぎてむしろ怖い。馬車もそのまま走り去って、外は落ち着いている。また人の流れについて街歩き再開だ。

 

だが、目ぼしい場所を一通り回ると、あまりの人の多さに、帰ることにした。順番待ちの人たちが列をなしている鐘楼には、登らなくてもいい。階段だって、進むのは大変そうだ。

 

大通りを避けて歩き始めると、思いがけずそこには人々の生活があった。眠ったような街かと思っていたが、当然ながら人々の暮らしは粛々と続いている。街全体が観光客のために存在しているのではないという、当たり前のことがかなり意外に思われるほどであった。

 

テーマパークなどではなく、人の住む街にお邪魔しているんだと改めて思う。これを忘れると、傍若無人に暮らしに入り込んでくる迷惑千万な観光客と嫌われることになるのだろう。これは、どんな地を訪れた時も常に心すべきことだ。

 

やがて駅に着く。トイレでも行っておこうかと考えたが、ここでもかなりの行列だ。電車の時間も迫っていることだし、まあいいかとホームに向かう。

 

ブリュッセル中央駅方面への列車が入ってくると、席は既に行楽帰りの人々で占められている。そこにブルージュからの乗客が加わり、乗れないかもと心配になるほどの大混雑ぶりであった。ほとんど立ちっぱなしで、ようやく座れたのは、駅に着く20分ほど前になってからであった。それにしてもこの日は、なかなかタフな一日となった。