照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

巨匠たちの名だたる絵を独占状態で鑑賞〜ルーブル美術館

ホテルから目の前のチュイルリー公園を通って、ルーブル美術館へ朝一番で赴く。ピラミッド型の入り口の前は、すでに開館を待つ人々でいっぱいだ。

 

入館してすぐ向かったのは、ドノン翼。ルネッサンスからバロック時代のイタリア絵画が先ず見たかった。それから順にリシュリュー翼へと回るつもりだ。

 

好きな絵以外は軽く流して・・・と思っていたが、プレートを読むたび足を留めてしまう。西洋美術史のおさらいをしているようだが、これが見納めのつもりでじっくりと鑑賞する。

 

ラファエロ(Raffaello Sanzio)『美しき女庭師(聖母子と幼児聖ヨハネ』、の前に立つ人はまばらで驚く。日本で公開されたなら、どれだけの観客を集めることか。ここルーブルを訪れる日本人観光客は大勢いるにも関わらず、ラフェエロのファンはいないのかと不思議な思いがする。

 

カラバッジオ(Michelangelo Merisi)の大きな作品の前には、ソファーが置かれていた。誰もいないのを幸いに、心ゆくまで鑑賞することができた。

 

フランドル派の巨匠と称されるルーベンス(Pieter Paul Rubens)は、長い事苦手であった。どこの美術館でも、じっくり鑑賞した記憶がない。それが、ルーブル美術館で、ルーベンスの回廊に立って初めてその力に圧倒された。大作を大量に描き続けるエネルギーに、感服してしまった。ルーベンスの前で、足を停めるようになったのはそれからだ。

 

フェルメール(Johannes Vermeer)の『レースを編む女』を眺めていると、日本人ご夫婦が横に並んでいた。「案外小さいのね」と奥様がつぶやく。「フェルメールの作品は小さいものが多いですよ」と、つい言葉をかけてしまった。

 

すると驚いたことに、「これフェルメールって言うの」というではないか。こちらが驚いて、「どうしてここがわかったのですか」と尋ねる。何しろ私のガイドブックには、展示場所が間違えて記載されていたのだから。すると、ツアーのパンフレットに、ここは必見とあったという。ルーベンスの回廊の位置を聞かれたので教えると、飛ぶように去っていった。

 

一人になって再びフェルメールを鑑賞すると、横には『天文学者』もあるではないか。数少ない作品の二点を見る機会があったのにと、先程の方に教えてあげられなかったのを残念に思う。でも、アッ、そうで終わっていたかもしれない。関心がなければ、所詮そんなところだ。

 

やや駆け足気味で、『モナリザ』が展示された部屋へ向かうツアー客に、私はやっぱり一人旅派だなと思いながら、ルーブルを後にした。

 

トラヤカフェで会った方のお店は、ルーブルからも近かった。お茶を飲んで寛いでいた時とは印象が異なって、キリリとしたお姉さんがホールを取り仕切っていた。


日本人には丁度よい量と味付けのフレンチで、旅の疲れが出はじめた胃にはぴったりであった。一杯の白ワインが心地よさを誘う。「義妹と私からです」と頂いた紅茶を飲み干し、ホテルへ帰って休憩する。

 

しかし、世界中から人を集める力を持つ巨匠たちの絵を、心ゆくまで独占状態で観ることができるなんて思いもかけなかったが、まさに至福の時となった。

 

それにしても、東京で開催される美術展はどうしてあんなにも混み合うのだろうかと、ちょっと不思議な気もする。ルーブル美術館でいえばちょうど『モナリザ』の前だけが同様の感じだが、それ以外はどこも、じっくりあるいはスイスイと自分の興味に応じて回れる。

 

だがそれは、ルーブル美術館に限ったことではない。もちろん超有名な作品の前にはたくさんの観客が押し寄せるが、東京での美術展に比べればずっと見やすい。というわけで、海外への美術館巡りの旅は、今しばらく続きそうだ。