照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

引き寄せられるように一枚の絵の前に〜それがアルテミジアとの出会い

一枚の絵の前に、引き寄せられるように立っていた。それがアルテミジア(Artemisia Lomi Gentileschi) の『絵を書く自画像』だった。2008年、バッキンガム宮殿クイーンズギャラリーを訪れた時の事だ。

画家である父オラツィオの作品を目にしたことはあったが、娘アルテミジアに関しては、何の知識もなかった。少し前に公開された映画も観ていなかった。美術好きの友人から名前を聞いていただけであった。

その2日前に出かけたナショナルギャラリーで、「それ美脚パンツ」と、プッサン(Nicolas Poussin)の部屋で椅子に座った監視員にいきなり話しかけられた。訪れる人も疎らな広い部屋で、プッサンに囲まれて飽き飽きしていたのだろう。日本にいた時彫刻をやっていたというその方は、イギリス人の夫とロンドンに住むようになって大分経つようだ。それをきっかけに小一時間程おしゃべりしたが、その時アルテミジアにも話が及んだ。映画について聞かれたが、残念ながら私には答えられなかった。

ここクイーンズギャラリーへは、作品があることすら知らずに来たのだったが、全てがここへ通じる伏線だったのかと偶然に驚いた。

女性が表立って絵を書く事を許されなかった時代、自分をモデルに描いたその作品は力強く、たちまち魅きつけられた。順に観て回るつもりが、視線を感じ吸い寄せられるように絵の前にいた。プレートを読んでアルテミジアと知る。

帰国後、アルテミジアについての記述を求めていろいろな本に当たった。だがどれもしっくりこなかった。とりわけ、『ホロフェルネスの首を斬るユディット』への、男性視点からの解釈に釈然としない思いは、今だに残っている。

可能な限り見て歩き、自分なりのアルテミジアを考えようと決めた。画集ではなく、本物から受ける印象を大事にしたいと思った。