照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

フェルメールを訪ねてケンウッドハウスへ〜ハムステッド (ロンドン)にて

ケンウッドハウスへ、フェルメール(Johannes Vermeer)の『ギターを弾く女』を見に行った。広大なハムステッドヒースの一角を、ちょっと歩いてみようとしたのが間違いであった。雨上がりの道はややぬかるんでいて歩き難く、方向感覚には自信があるつもりであったが、全く逆の方へ向かっていた。

 

そんな時、大型犬を連れた日本人女性にめぐり合えたのは幸運であった。ケンウッドハウスへ行きたい旨を伝え、おおまかな方向を指示してもらう。散歩中の犬は、私へも挨拶してくれる。生成りのズボンを履いてきたことを後悔していたが、すでに私の足に乗り、胸の方まで前足を伸ばす勢いだ。

 

飼い主さんの手前困った顔もできず、泥付いちゃったかなと内心で思っていた。すると「ミッシャ、だめよ」と注意してくれたので、犬は私から少し離れる。名前を聞いた途端、チェリストのミッシャ・マイスキーが浮かび、まあいいかと思う。

 

一人になってまた適当に歩き出したために、起伏のある森の中でてこずった。車道を教えられたのにも関わらず、近道と勝手に判断してしまったのが迂闊であった。十数年前に一度、広大なハムステッドヒースを横切って、反対側からバスに乗りカムデンロックまで行った経験を過大視していた。

 

格闘しつつも、やがてケンウッドハウスへ到着した。ミッシャからの友好の足跡を心配するより、靴が泥だらけであった。ハムステッドでおしゃれに美術鑑賞どころか、ハイキング途中に迷い込んで来てしまいましたという感じである。

 

一歩中に入れば案内の方は優しく、日本語の館内ガイドなど手渡してくれる。泥のことなど忘れて絵画に見入ってしまった。フェルメールは私にはやや物足らなかったが、レンブラント(Rembrandt van Rijn)の自画像が思いのほか良かった。

 

見ごたえのある作品がたくさんで、幸せな気分で館を後にした。帰りはハムステッドの駅まで、瀟洒な家々を眺めながら、車道を歩いて向かった。