照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

シンプルライフ 彼岸に母を想う

十数年前に亡くなった母は、衣装持ちであった。着物から装身具、袋物と、箪笥に溢れていた。その箪笥も、買い替えで捨てる人がいれば貰い受けて、古道具屋が開店できるほどであった。

 

形見分けの日をきっかけに、自分の全てを見直そうと決意した。誰が私の荷物を処分してくれるのだろう。素朴な思いからだった。断捨離という言葉が広がる前の事だ。何も望まない私に、父が持たせてくれたのは母愛用の硯だった。

 

引越しの日、半年かけて整理した荷物をクローゼットに収納すると、何もない部屋は十分広く感じられた。

 

必要最小限の物での暮らしは快適で、ついでに冷暖房もやめた。水シャワーを始め、散歩に筋トレで身体を鍛える事にした。扇風機には、助けてもらっている。

 

あらゆるものを手放してみると、寧ろ豊かになった思いがする。衣類でも食材でも、活かしきる事を心掛けた。物よりも経験にお金を使う事に重きを置いていたが、加速した。

 

人との関係も見直そうと思ったのは、ここ数年だ。ただでさえ少ない友人・知人を失くす事にはためらいがあった。孤独な時間は好きだが、時には人の輪へも加わりたかった。だが次第に、無理に過ごす時間に疲れを覚えるようになっていた。

 

一緒にいて楽しく、エネルギーが湧いてくる。そう思えなければ、意味がないような気がしてきた。自分のワクワク感を大事にしようと決めた。

 

いざ手放してみると、逆に、趣味の合う人との出会いが次々と訪れた。人が持てるものは、限られている。捨てなければ、得られないものもある。それは人との関係にも当てはまる。

 

シンプルライフは、母からの一番の贈り物だ。