照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

アイルランド国立美術館から国立博物館へ〜入場無料が嬉しい

ダブリンでは、カラヴァッジョ(Michelangelo Merisi da Caravaggio)の『キリストの捕縛』と、フェルメール(Johannes Vermeer)『手紙を書く婦人と召使』を見るという目的もあった。この作品を所蔵しているアイルランド国立美術館は、滞在したメリオンホテルから歩いてすぐである。部屋に荷物を置くとすぐに出かけていった。
 
手始めはカラヴァッジョからと、窓口でその場所を尋ねると、現在ローマの美術館に貸し出されているという。正直落胆してしまった。ギネスは日本でも飲めるが、『キリストの捕縛』は難しい。ルーベンスPeter Paul Rubens)が苦手な頃、ブリューゲル(Jan Brueghel the Elder・大ブューゲルの次男)とのコラボ展を、ウイーン、日本、アメリカと三ヶ所で見る機会があったのを思い出す。行く先々でコラボ展のポスターを発見した時は驚いた。はるばる訪ねても、出会えない事もある。縁の不思議さ。
 
気を取り直して館内を巡っていると、ブリューゲル(Pieter Brueghel the Younger ・大ブリューゲルの長男)の『農民の婚礼』があった。父描く同テーマの絵とは全く違うタッチであるが、興味深い。このような絵の存在さえ知らなかった私にとっては、大収穫である。これまで訪れた他国の美術館に比べると、所蔵作品がそれほど多いとは感じなかったが、さすがヨーロッパ、質が高いと感心した。
 
美術館を訪れる人は少なく、閑散とした館内で、監視員に話しかけられた。神戸に居たことがあるというその方は、「おはよう」から始まってありったけの日本語を披露してくれる。「早く起きろ」には笑ってしまった。よく言われていたのかと推測する。その後で、少し離れた場所から私たちの様子を眺めていた同僚に、日本語を伝授し始めたのは微笑ましかった。
 
その次にアイルランド国立博物館へ回ったが、ここはたくさんの見物客で混雑していた。先史時代からケルト、バイキング、中世、イギリスからの独立と、この国の歴史を、展示物を通して知ることができる。とりわけ初期の黄金の装飾品は素晴らしく、ケースに顔を押し付けるようにしてその精緻さに見入っていた。博物館内を巡っているうちに、司馬遼太郎の『愛蘭土紀行』や、ケン・ローチ監督の『麦の穂をゆらす風』で描かれた時代の、貧しさや悲惨さよりは、それよりはるか前の時代の、文化的な豊かさに目を奪われた。
 
美術館・博物館とたっぷり見学した後は、ぶらぶらと人波についてゆく。目に付いた店で、夕食用の品々を購入してからホテルまで帰る。明日の、ギネスストアハウスでのビールを楽しみに、今日は早めに休むことにする。