照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

フィレンツェ到着〜長旅もなんのその魅力的な街に急に元気が湧いてきた

フィレンツェは、道路の幅が狭い街であった。空港からのバスで中央駅前で降りると、ホテルへは徒歩で10分弱である。駅前からパンツァーニ通りへ入り、途中トルナブオーニ通りへ曲がらなければならない。通り名を示すプレートに、この狭い道がブランド店通り、と初めは半信半疑であった。やがて目指す店が見えて安心した。その角を曲がると、ホテル ヘルヴェティア&ブリストルがあった。

朝の10時過ぎと早い時間だったが、部屋を用意してくれた。ほぼ一日かけて辿り着いたので、先ずはシャワーを浴びたかった。少し生き返る。街の感覚を掴むために、ホテル界隈を歩いてみることにした。レプッブリカ広場に程近いこのホテルからは、ドゥオーモもヴェッキオ宮・ウフィツィ美術館も歩いてすぐであった。

歩き始めた途端元気が蘇り、更にヴェッキオ橋を渡り、足が向くまま進んでゆく。賑わいのあるカフェで昼食を摂り、イタリアの皆さんは何を召し上がっているのだろうと、眺める余裕も生まれた。初イタリアだ。これまで、フランス以外のラテン系の国々にはさほど興味も湧かず、美術史を学ぶまで、フィレンツェにも関心はなかった。


カフェにひとたび腰を落ち着けると、疲れがでて動くのが億劫になってきた。来る途中で見つけたスーパーマーケットで、飲み物や軽食を購入してからホテルへ戻ることにした。ホテルの側で、地元の人らしきイタリア人から、原発事故の影響について聞かれた。東京では、皆何処かに避難しているのかと問う。また過剰反応かと思いながら、東京は安全で、そういう人はほとんどいないと答えた。

しばらく話しているうちに、街を案内しようと言う。今日が無理なら、明日でも明後日でもと言う。断ってさよならしてから、一応用心のため、ホテルの周辺を一回りしてから帰る。イタリアや日本の彫刻などについて話しているのは楽しかったが、おしゃべりで気を許すのが一番危ない。話しかけてきた人には気をつけろ、が鉄則だ。

長時間フライトと出発直前までの忙しさで、身体は疲れきっていた。電力不足のため、通勤電車は大幅な間引き運転をしていた。混雑を避けるため早朝に出社して、帰りはJRの駅から徒歩で帰宅ということも何度かあった。出発前夜も、私鉄駅に並ぶ凄まじい行列に、恐れをなして歩いた。地震からこれまでの事を考えているうちに、そのまま眠ってしまった。だが時差ボケで、夜中に目が覚めた。眠れぬままに、翌日に予定しているウフィツィ美術館の見所などを確認していた。