ソグネフィヨルド巡り〜自ずと湧く自然への畏敬の念 イン ノルウェー
出発間際にボート乗り場へ行くと、長蛇の列であった。ジェニーは前から二番目に並んでいたが、割り込むわけにはいかないので私は列の後ろへつく。
乗船しても、2階の窓際の席は空いていなかった。1階に戻り、席を確保してからジェニーを探す。彼女は外のベンチに座っていた。5時間半も寒い外にはいられないので、私は中にいると断ってから席に落ち着く。
初めて会った人と6時間も一緒にいれば話も尽きる。ましてこちらは、拙い英語だ。お互い丁度良かったかもしれないと思った。
絵葉書をくれた知人のように、フィヨルドを見て人生観が変わる事はなかったが、想像以上に素晴らしかった。遠くの山に白い筋が見えると思えば、それはフィヨルドに落ちる滝であった。万年雪を抱く山々を背景に、ひっそりと佇む家々が水面に映るさまは実に美しい。
ある場所に停泊した時、ボートを見に来たのか、海を眺めて佇む親子がいた。乗船を待つ人々や、見送りや迎えの人々が放つ賑やかさから離れ、静かに立っていた。ただ海を見つめている幼子と両親の姿に、ムンクが描く絵のモチーフが重なった。そこには祈りがあった。