照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

出会わなかった言葉 読書に寄せて

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冬の薔薇
 
これまで生きてきた間に、自分が出会わなかった言葉はどれほどたくさん有るのだろう。むしろ逆を数えた方が早いかもしれない。
 
新聞の字を拾いながら読んだ幼い頃からこれまで、随分沢山の文字に出会ってきた。活字に興味を持って以来、本は手当たり次第夢中になって読んだ。国語の教科書に載る、抜粋したような小説も好きだった。長じてからは、当然ながら原文で読み直したが。10代の頃から、服は買わなくても本にはお金を使った。SFとホラーだけは今でも馴染みがないが、それ以外あらゆるジャンルに関心を持った。読書は私にとって、見知らぬ世界への窓口であった。
 
このようにして集めた本は、自分の全てのような気がして、手放す事は出来ないと長い事思い込んでいた。だが十数年前、引越しに際し数冊を残して他は全て処分してしまった。ノスタルジアで、本を含めて物を置いておくつもりはなかった。本当に必要なら、再度手に入れれば良いと考えた。
 
物を増やしたくないので、今はなるべく本を買わないようにしているが、それでもある程度は溜まってくる。電子版がもっと普及すればいいのにと思う。ただ、以前のように多くの本を読みたいとは思わなくなってきた。最近は気に入った作者の、その中でも特に好みの本を繰り返し読むようになった。
 

冒頭に戻れば、数多くの言葉に出会う事に、言い換えれば、数多くの本を求める事にさほどの意味は無いように思える。出会わなかった言葉は、所詮自分とは無縁なのだ。大事なのは、例えばただ一冊の本との出会いであったとしても、それを手掛かりとして、どれだけ自分の内面を広げる事ができるかだ。そこから自分の言葉をどれほど紡ぎ出せるかだ。それは頭の中で考えただけでは出来ない。暮らしの中で実践してこそ初めて生まれ出る。私にとって本を読むとは、そのようなことだ。時には、純粋に物語としての本を楽しむ事もあるが、その底にはやはり作家個人の哲学が感じられるものが好きだ。

 
誰もが、自分の指針となるような自分の一冊に出会える事を、本を読む楽しみを見つける事が出来るようにと願う。年末年始は、読書には丁度いい機会だ。