照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

生きる 考える力と行動する勇気 ーオジロワシの子育てに思う

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ルンビニ公園の猫
 
バンコク最終日、朝4時半のチェックアウトまで間があったのでテレビをつけた。日本の天気予報でもやっているかとNHKにすれば、ワイルドライフという番組をやっていた。(英国・スコットランド・荒海にワシが舞い、カワウソが泳ぐ)とタイトルが出ている。途中からのようだが、興味を惹かれ見ることにした。
 
厳しい自然環境下での、オジロワシやカワウソの子育てが中心となっている。嵐が来ると、鳥たちは魚を捕る事が出来ない。木に止まってひたすら雨が止むのを待っている。嵐は、数日の時もあれば、一週間続く事もある。
 
オジロワシの巣の中では、雛がお腹を空かしてうずくまっている。今回は三日間で嵐が収まったので良かったが、一週間続くと、持ち堪えられずに生命を落とす場合もあるようだ。
 
雨が止むと、親ワシはまず羽を乾かす。それから餌を探しに飛んで行く。急降下したと思ったら、もう足で魚を掴んでいる。舞い上がるとほとんど同時に、それを横取りしようと数羽のカモメが回りを囲む。ワシは、取られまいと必死で飛び続ける。ようやくの想いで、雛の待つ巣までやって来る。
 
お腹を空かし切った雛は、大きな魚をそのまま呑みこもうとするが上手くいかない。見かねた母ワシが、雛が食べやすいように細かく千切ってやる。自分も雛同様空腹である母ワシだが、自分は食べないで雛を見守るだけだ。少しすると、今度は父ワシが魚を持って戻って来る。それを巣の中へ置くと、母ワシ、父ワシ共に次の餌を求めて飛んで行く。
 
海が荒れていない時に、どれだけ餌を取れるかが生命を繋ぐ鍵となるようだ。親ワシの必死な姿を見ていると、自然界で生き抜くには、知恵と勇気が必要だと改めて感じさせられる。無事に雛が育たなければ、その種は絶えてしまう。植物も動物も、種の保存に必死なのだ。昔子供向けの本で、動物の家族の話を読んだ事があった。主人公となる動物に肩入れしながら読んでいたが、それほど単純な世界ではないと今は解る。餌を横取りしようとする鳥たちも又必死なのだ。
 
やがて巣立ちの時期が来ると、お腹が空いた子ワシがどれほど親を呼んでも、親ワシは近くから見守るだけだ。仕方なしに、子ワシは自分で餌を探しに行く。これは、カワウソの親も同様だ。自分で餌を探せなければ、結局生き残れない。これは厳しい自然の掟だ。これを繰り返しながら種を保ってきたのだという事が、良く解る。これをそのまま人間に当てはめようとは思わないが、生物にとって極限で生きるために必要なのは、自ら考える力と行動する勇気だと改めて教えられた思いがする。
 
これを見ながら、『幸せな子ーアウシュビッツを一人で生き抜いた少年』(トーマス・バーゲンソール著・朝日文庫)が重なった。真っ先に不要とされる子供が、自分の知恵と勇気で苛酷な収容所で生き抜いた話だ。
その2へ続く