照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

家計貯蓄率低下に思う その1

日本人の家計貯蓄率が2013年度初めて−1.3%になったという記事を目にした。『BBCは、「1975年当時の23.1%と比較すると雲泥の差・・・世界一高齢化のスピードが速い日本では、高齢者が貯蓄を取り崩して生活しているためこれからも貯蓄率の低下は免れない」と指摘している。』という事だ。

 
貯蓄率低下により予想される様々な大きな問題はさておき、低下について私なりに感じた事がある。
 
巷で言われているような、潤沢な年金受給者は、ごく一部だと思われる。実際私の周りにはいない。貯蓄から生活費を捻出しようにも、都市生活者ではそれさえ困難な人が多い。貯蓄率の低下は、日々の生活費のためというよりはむしろ、施設入所にかかる費用のためというのが一番の要因の気がする。
 
取引先の会社を退職される方が、挨拶に見えた時の事だ。以前は同系列の会社だったため、その方とは長いお付き合いだ。ご自分の家庭状況も、詳しく話してくれた。この度は、認知症の奥様の母上を介護するため退職を決めたそうだ。施設入所には相当のお金が掛かるうえ、悪化するのが速いと、ご自分の母上の経験談を語ってくれた。
 
実家は都内にあって、お母様は弟さん一家と同敷地内の離れで一人で暮らしていた。だが、怪我で入院して以降認知症になり、一人で暮らすどころか、自宅で暮らす事すら困難になったという。ようやく探しあてた施設に入所する事になったが、驚くほどのスピードで認知症が進んだそうだ。
 
施設入所の費用は母上の貯蓄で賄ったが、3年で底を尽きかけたという。弟さんから費用の半分負担を相談された時、住宅ローンに、子供の教育費で一杯の自分に余裕はなく悩んだという。自分の退職金を前借りしようかと、本気で考えたそうだ。「そしたら有難い事に、お袋が亡くなってくれてね」と冗談のように仰った。かなり本音も入っていたと思う。多分退職金は、住宅ローン返済もしくは老後へ当てようとの心づもりもあっただろう。どれほど大切な親でも、自分と家族の生活もある事を考慮すると複雑だ。人の判断に、他人がとやかく言える事ではない。
その2に続く