照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

家計貯蓄率低下に思う その2

介護施設入所に費用がかかる話は、他にも数人の方から聞いていた。入所者自身の年金と貯蓄から費用を捻出している例が多い。

 
私が勤務する事務所があるビルに、夕方だけパートタイムでお掃除に来られる方がいらっしゃる。ビル内の廊下を掃除している折、ほんのたまに立ち話する事があるが、とても70歳過ぎには見えない。話すようになったのは、自宅屋上で沢山採れたからと、ゴーヤを事務所に持ってきて下さってからだ。つい最近も、息子さんたちからのプレゼントで、2週間のハワイ旅行をしたとお土産を届けて下さった。
 
お聞きすると、ご主人と二人ビジネスクラスで、成田から都内の自宅まで迎車つきとなかなかのデラックス旅だったようだ。お子様方からのプレゼントとはいえ、そのように余裕がある方が、暇つぶしと健康を考えての優雅な勤務かと思っていたが、そうではなかった。午前中は別のビルへお掃除に入っていると聞いて更に驚いた。将来、自分の施設入所を視野に入れての考えからであった。
 
ほんの立ち話ではあったが、ご主人の両親を自宅で介護し、自分だけでは無理となってから施設に預けた時の話をして下さった。お義父様の時は、お義母様が費用を負担をしてくれたので何とかなったそうだが、お義母様の時は本当に大変だったと言う。3人息子さんがいらっしゃるが、下の方が中学生の頃という。ずいぶん前だが、毎月の費用30万の遣り繰りに困ったと言う。ご主人は大手メーカーに勤務していたそうだが、その給与だけではとても追いつかず働き始めたそうだ。それ以後ずっと働いている。自分の経験から、自分たちが施設入所となったら、とても子供たちだけでは賄いきれないとの配慮から少しでも貯蓄を増やそうと仕事に励んでいる。
 
公的な施設であっても、自宅の有る無し、扶養義務者の年収で費用負担が異なるそうだ。その方の場合、お義母様は最初病院に入院されていたという。毎月あまりの高額支払いに音を上げて、公的施設を探しようやく入所できたとホッとしたものの、費用は変わらなかったという。人からぐんと少なくてすむと聞いていたが、家庭の事情により異なるとまでは皆知らなかったようだ。身寄りもなく費用負担が無理の人の場合、都や国がそれぞれの割合で負担しているという。公的施設は、当時でも数百人待ちだったそうだ。今は申請してから入所できるまで、更に年数が伸びているという。
 
月30万という費用については、先に取り上げた方からもお聞きした。入所費以外に細々とした経費がかかり、それらを合計すると30万位になるという話であった。お母様の貯蓄で3年間賄えたという事だが、感覚からすると一千万はあっという間に消えたということになる。せっせと年月をかけて貯めたお金も、施設に入所した途端数年で底をつく。現在は、施設に入所する方がもっと多くなっている。貯蓄率が低下するのも加速するわけだ。
その3に続く