照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

食を考える その3

食と健康に関する本は、本屋さんにたくさん並んでいる。元気で長生きするには、あれがいいとかこれはだめとか、またその逆もある。どれが良いやら悪いやら・・・分からない。結局、自分に合った方法は自分で編み出すしかないという結論に至る。成人の平均摂取カロリーとして数字が挙げられているが、実際、人は何をどれくらい食べればいいのだろう。そんな事を考えていた時、酒井雄哉師が浮かんできた。

大阿闍梨酒井雄哉師をご存知の方は多いと思う。千日回峰行を2度成し遂げられた方で、2013年に87歳で亡くなられている。荒行として知られるこの行を2度達成したのは、信長による比叡山延暦寺焼討ち以降、まだ3名だそうだ。1日に30キロから40キロ山中を歩き、7年間に歩く距離は、地球を一周するに等しい。その間、病気やけがによる休みは許されない。途中でやめる事は死を意味するという。睡眠は、1日3時間あまり、食事は、少量の精進料理を日に2食という。酒井雄哉師の場合、冷やしうどんにじゃがいもの塩蒸し、豆腐の胡麻味噌和えを、毎食摂られたそうだ。

運動量に比べて、食事や睡眠時間の少なさには驚く。その食事も、毎日同じで質素そのものだ。人はたったこれだけの食事で、道もないような山中を日に数十キロ歩く事ができる。その間、病気やけがをしなかったという事にも驚かされる。身体に勢いがある若い時ならともかく、2度目は60歳の時だ。一般に推奨される栄養摂取の観点からは、ずいぶんかけ離れている。誰にでも当てはまると、一概には言えない。だが、人は、これだけでも生きられるということになる。むしろ、多く摂りすぎて動かないから、病気になるのかもしれない。

誰もが好きな物、殊に甘い物をふんだんに食べられるようになったのは、日本でもそれほど古い話ではない。今でも世界には、お菓子どころか、その日の食事にも事欠く人たちがたくさんいる。カカオ農園で重労働に従事する子供たちは、チョコレートを口にすることなどないという。その苦い現実は、豊かな国の人々になかなか伝わらない。知っていて且つ買い物する際、フェアトレードを意識している人はどれ位いるのだろう。

これからは自分の食だけではなく、貧しい地域の人たちへの食へも思いを馳せたい。そのためには、食品以外のフェアトレードにももっと関心を持って、買い物する時の自分の基準にしたい。つまり価格で選ぶのではなく、物の対価として相応しい額を支払うという事だ。

生命を繋ぐためには、自分にとって必要なだけの量があればいい。誰にとっても、食は生命そのものなのだ。自分だけ欲張る事のないように、常に自戒したい。誰もが労働に見合った収入で、日々の糧を得られるようにとの思いで食材を選び、食卓に向かいたい。