照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

立春に一編の詩

今日は立春、「早春賦」にもあるように、まだまだ寒さからは抜け出せない。
でも、ほんの少し、心に春を先取りしたくなるよう詩を見つけた。
 
春の問題    辻征夫

また春になってしまった

・・・省略

微風にひらひら舞い落ちるちいさな花
あるいはドサッと頭上に落下する巨大な花
ああこの花々が主食だったらくらしはどんなにらくだろう
どだいおれに恐竜なんかが
殺せるわけがないじゃないか ちきしょう
などと原始語でつぶやき
石斧や 棍棒などにちらと眼をやり
膝をかかえてかんがえこむ
そんな男もいただろうか

・・・省略

髯や髭の
原始時代の
原始人よ
不安や
いろんな種類の
おっかなさに
よくぞ耐えてこんにちまで
生きてきたなと誉めてやりたいが
きみは
すなわちぼくで
ぼくはきみなので
自画自賛はつつしみたい

『詩のこころを読む』茨木のり子・岩波ジュニア新書P・23〜26抜粋

 何だか楽しく、終いはしんみりと、でも全体に漂うユーモアについクスリとしてしまう。

これは、詩人茨木のり子さんの、心に残る詩のコレクションのひとつだ。本屋さんで、詩人の名に目が留まり偶然手にした。ジュニア新書というように、若い方向けに書かれた本だが、読み始めると、たちまち引き込まれてしまった。知っている詩も知らない詩も、丁寧に何度でも噛み締めた。ジュニアかと、手に取らないでいたら、大変な損失となるところであった。

はじめに(P.ⅲ)でも述べておられるように、「・・・私を幾重にも豊かにしつづけてくれた詩よ、・・」長い歳月、心を満たしてくれた数々の詩は、茨木のり子さんにとって、ダイヤモンドや毛皮以上の価値があった。

そのような詩で、心を暖めることができればと、今しばらくは、この本から数編をお借りしたい。おすそ分けのおすそ分けだ。

ダイヤモンドの一つも持たない私には、ガラクタと片付ける潔さはまだない。手にすれば、その輝きに魅せられてしまうかもしれない。だが茨木のり子さんの高みへ近づきたいので、詩の世界で先ずは心を豊かにしたい。