朝の車内で居眠り達人に遭遇〜少し羨ましいくらいの技?だがない方がいいかも
先日、久しぶりに休みを取って所用のため横浜方面へ出かけた。都心とは逆方向へ向かう朝の電車は、ラッシュをずらしたこともあって空いており、途中からは座ることができた。だが、座ろうとする前に、何かに躓きよろけてしまった。
ぶつかった人に恐縮して謝り、腰を下ろしてから前を見れば、ぐっすり眠りこけている男性が目に入った。その男性の足がだいぶ前に突き出ており、私はその靴に引っかかったと分かった。
頭は、右隣の若い女性の肩にしっかり乗せている。一方、乗せられている女性の方は思いっきり迷惑そうにしている。身体をほとんど斜めに傾け、何とか男性の頭から逃れようとしている。だが、懸命な努力にも関わらず、その頭を振り切ることはできない。
その女性と私は目が合ってしまったのだが、本当に弱りきった表情を浮かべていた。気の毒に思いながらも、その構図が可笑しく、マスクを付けているのを幸いに、下を向いて笑いを噛み殺していた。自分が同じ立場でも、彼女と同じことを考えるだろう。
男性は肩を外されると、一瞬は頭を真っ直ぐにするのだが、すぐに傾いてしまう。面白いことに、左隣の男性の方へは傾かない。
横浜へついてその女性も私も降りたが、ぐっすり眠っている男性は、目を覚ます気配すらない。手にしていた傘も床に倒れたままだ。終点まではあと4駅あるが、どこまで行ったら気づくのだろう。
この路線は今や埼玉方面ともつながっているが、どこから乗ってきたのだろうと思っていた。そしてふと、「この人はどこからきたのか、この人は何者か、この人はどこへ行くのか」という言葉が浮かんだ。
ゴーギャンの有名な作品、『われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか』をもじったものだ。
この男性が勤め人だとしたら、確実に遅刻だろう。もし上司から注意を受けたりしたら、不覚な寝過ごしを悔やみ、僅かながら哲学的思いに浸るかもしれない。それにしても、車内であれほどぐっすり眠れるとは感心するばかりだ。