照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

春うらら〜スミレに辛夷(コブシ)にハクモクレン

駅へ向かう途中、道端にスミレが咲いているのを見つけた。存在を知らせまいとするかのようにひっそりと、紫の花を地面に向けている。

 

電車に乗れば、それとは対照的に、白い鳥たちが集っているかのように華やかな、白木蓮の花も見える。春だなあと思う。

人の見舞いに訪れた病院の前では、辛夷の花も咲きはじめていた。同じ属ながら、白木蓮の花に比べ素朴なこの花が、私はとりわけ好きだ。高校の頃にこの花を知って以来、なぜか気に入っている。

 

初めて見た辛夷の木は細く、それほど丈高くなかった。自分の周りではほとんど目にすることがなかったこともあって、辛夷が大木である事もずっと知らなかった。

今の住まいに越してきて後、散歩の折、遠くまで足を伸ばした公園で、何本もの大きな辛夷の木を目にした時は驚いた。だが、花をつけていなければ、気付きさえしなかっただろう。4月初め頃の花かと思っていたが、この公園では咲き出すのが早い。3月初旬から気にしていなければ、見逃してしまう。

大木であるということが分かってから、高速道路沿い、または、遠方に向かう電車の窓からと、たびたびその木を目にするようになった。近くでも、遠目にでも、大きな木を眺めていると、ずいぶん元気になる。誰にも季節ごとに待ち望む花があると思うが、私にとっては辛夷が春告げ花だ。

ちなみに、早春に他の木々に先駆けて咲く辛夷を、別名「田打ち桜」と呼ぶそうだ。昔の人々は、その年々の花の時期を、農作業をする目安にしていたのだろうか。自然の流れに沿った暮らしに、ふと思いを馳せる。