照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

パラパラ印刷物〜意外な一面にその人への苦手意識が遠のく

ある人が、印刷物が出るのをプリンターの前で待っていた。然し、自分のは一向に出てこない。誰が出したか、大量の印刷物が出続けている。ずいぶん時間がかかるので、何をプリントアウトしているのか一枚を手にとってみると、白いままだ。業務のIさんを呼んで、これ止めた方がいいんじゃないかと言う。

 
プリントアウトを強制的に中止して、よく見ると真っ白ではなく、一枚に一文字が印刷されている。印刷物は、既に100枚以上になっていた。誰か印刷中の人はいるかと声をかけるが、返事はない。何だろうと他の人もやってきて、印刷された文字を丁寧に調べ始める。
 
パラパラマンガの要領で、納・品・書と客先までが判った。側を通りかかった人が、それうちの部署じゃないと言う。先ほど、Kさんが納品書を一枚印刷すると言っていたのを思い出した私は、彼女の側へ行ってさっき印刷したのはもう手元にあるかどうか聞いてみた。すると、まだですとのんびり言う。
 
プリンター近くにいた人には、大量のパラパラ印刷物の出所が分かってしまった。Kさんは、プリンターが勝手な事をしたみたいでえ〜すと、大きな事で皆に伝える。明るく悪気のないKさんに、そういう事もあるよねと援護する。
 
だが、このような事態は初めてであった。パソコンの画面で、印刷の文字を数回押してしまった事による不具合の可能性が高い。だが、そんな余計な推測は口にしない。入院中の同僚に代わって、私の部署で仕事をしてくれている彼女の気を削ぎたくはなかった。また、失敗したコピー用紙は、業務の方で裏紙として印刷に使うというのでほっとした。
 
彼女が自分の部署にいた時は、このような印刷ミスなどもちろんしなかった。業務課なので、逆に、助けを求められて駆けつける立場であった。仕事が違えば、使用するシステムも異なる。やはり何かと勝手が違うのも当然だ。パラパラ印刷物は、可笑しくて、思い出すだけで愉快になってくる。
 
しっかり者でキリッとしたイメージのKさんは、経理業務には明るく、業務にはぴったりの人であった。ミスするのが大嫌いであったため、自分の仕事には細心の注意を払っていた。ミスなど指摘されると、その原因が自分にはない事を徹底的に証明するタイプであった。
 
そのような彼女を長いこと見てきたので、同じ部署で仕事をするようになって、その意外な面に驚き、且つ楽しませてもらっている。
 
人を知るには、ある程度の期間がかかると、改めて感じた。お互いの良い面に気づくと、職場の雰囲気が更に明るく軽やかになる。また幸いなことに、現在私の職場では、人と人との間に波風を立てようと画策する人がいないのでありがたい。物事は場合によって、悪い面より良い面を見る努力も必要だ。