照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

芝桜のじゅうたんで元気に

ボイストレーニングの日、いつものバス停より少し手前で降りてみた。大通りから外れて、畑がある方へと歩いて行く。これから種を蒔くのか、きれいに均されているが、黒々とした畑には特に何も無い。取り残しの菜に咲いた黄色の花が、ところどころにあるだけだ。

そのままぶらぶら進むと、前方に突然、白やピンクのじゅうたんが広がる。植木畑か、間隔を置いて整然と並んだ若木の根元一面にシバザクラがあった。前日までとは打って変わり、やや肌寒くどんよりした朝、その一角だけ明るく、別世界の雰囲気だ。

前日から交感神経優位状態のままでいた私の身体も、フワッと解れてゆくような思いだ。こんな景色に出会えるなんてと感激ひとしおで、暫し佇み、見惚れていた。

地面を覆う小花に、アムステルダムからベルギーに向かう列車の窓から見たチューリップ畑が重なった。数色の布がどこまでも続いているようなチューリップ畑は見事で、時々現れる風車と相まって、初めての光景は私を魅了した。目の前の畑とは規模が全く違うが、あの時と同じ思いが蘇ってきた。小花ひとつひとつは何という事も無いが、群生するとこれほど力を持つんだと感心していた。

美しさに心踊り、私の身体も副交感神経へと切り替わったのか、気持ちもすっかりリラックスモードになる。歌姫への道は遥かなれど、今日のレッスンへも弾みがつく。ちょっとした事で気分が切り替わる私は、まったくもって単純であるが、些細なことにも感動する心は大事にしたい。シバザクラよ、ありがとう!