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照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

常に自分の動作を意識する

時々、人の動作を見ていて、段取りが悪いと思うことがある。土曜日の朝、私は、都心とは逆方向へ向かう電車に乗っていた。一列のシートに、一人か二人が座っているというほとんどガラ空き状態であった。

ある駅で、コーヒーの容器を手にした通勤途上らしき若い女性が乗ってきた。黒のスーツに黒のパンプス、黒の大きめのバッグを持っている。私の反対側のシートに腰を下ろすと、バッグから何かを取り出したいのか、コーヒーの置き場に思案しはじめた。

ようやく、バッグの中に置くことを思いついたらしく、そっと入れた。フタの部分の小さな飲み口から大量にこぼれる心配がないとはいえ、何かの拍子に倒れたりしたら、バッグの中が濡れてしまう。他人事ながら、倒れなければいいけどと気になった。

すると、バッグから取り出したのは、干し芋と書かれた四角いお土産用の箱であった。縦にしたり横にしたりして眺めてから、膝の上に置いた。コーヒーと一緒に、干し芋を食べたかったのかと思いながら見ていると、次ぎに、布袋を取り出した。既に何か入っている袋へ、干し芋の箱を何とか押し入れると、バッグの横へ置いた。せっかく一つに収まっている物を二つにして、下車する時、置き忘れなければいいが
と思った。

コーヒーを、バッグの中に置いてまでやらなければならないほど緊急とは思われなかった。他にも何か取り出したいようだが、さすがにバッグの中は、コーヒーの置き場所として相応しくないと思ったのか、少し考えてから、膝の間に挟んだ。ちょっと目を引くが、バッグの中に比べて危険度は低い。それに、見ている人は、向かいの座席に座っている私くらいだ。もっとも、誰かの視線を気にしている様子は、まったくない。

すると今度は、キーホルダーを取り出して、飛び出ている鍵を、きちんとホルダー内に収めてからバッグへ戻した。次ぎに、何かを買った時にもらったのか、小さめのビニール袋を取り出して、バッグのポケットのような所へ入れた。コーヒー容器をこのビニール袋に入れて上を結んで、床に置いた方が安全ではないかと思いながら見ていた。電車は、急行待ちのためかしばらく止まっている。

バッグの整理を始めた女性に、コーヒーを飲み終えてからでもいいのではないかと、私は、余計なお世話的なことを考えていた。だがやがて、イヤフォンを取り出し、しばらく伸ばしたり縮めたりした後、携帯を取り出した。イヤフォンを耳に付けると、携帯の操作を始め、コーヒーも膝から手に戻した。ここでようやく、彼女がしたかったことがわかった。電車も折良く発車した。

大変失礼ながら、一連の動作に、この調子では、仕事の段取りも悪いのではないかと想像してしまった。私の職場でも、無駄な動きの多い人は、概して、仕事の進め方が格段に遅い。また、人への説明も要領を得ず、無駄に長い。

電車内で、自分の行動が誰かに見られているとは思いもしなかったであろう。だが、場所を問わず、自分の動きは案外見られているものだ。また、見知らぬ人がいる場で、周りをまったく意識せずに、自分のことに没頭しているのは、ずいぶん無防備でもある。

今回はたまたまガラ空き状態の車内であったが、一歩外に出れば、常に周囲に気をつけなければならない。とりわけ昨今、不意に被害者になることもある。避けられない場合も当然あるが、日頃から意識するとしないでは大違いだ。それは、海外旅行する時の大事な注意点でもある。普段していない事は、旅先だからと、急にできるようにはならない。日頃の習慣が重要になる。

別に批判したいと思って眺めているわけではなく、たまたま目に入ったのだが、人の動作は、我が身を振り返りさせてくれるいい機会だ。ちょっと上から目線の嫌な奴と思われるかもしれないが、自分の動作を意識することの重要性を感じたので、敢えて書いてみた。