照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

人生は有限と意識するだけで生き方が変わる

数年前は、団塊の世代の退職に合わせるかのように、退職後の心得を説いた本が目立った。パラパラと覗いてみれば、これまで仕事に費やしてきた時間を、どのように埋めればいいかを教える内容ばかりであった。

中でも、趣味を持って友人を増やそうとか、地域の活動に参加しようとか、積極的に人と関わることを勧める意見には、何か違和感を覚えた。確かにいい事には違いないが、そのような場こそ、人との関係は、長い付き合いの上に築かれるものだろう。

それに、職場での人間関係がストレスの一番に挙げられる時代に、場が変わるからといって、人との結びつきを増やしたところで、上手くいくとも思われない。新たなストレスを抱え込む結果に終わる気がする。

また、友人が多ければ、本当に充実した毎日になるだろうか。時間の穴埋め程度の付き合いなら、なくてもいい。もともと人との関係を築くのが苦手な人は、無理をする必要はない。むしろ人との関係を整理して、自分の時間を、自分で充実させるようにしたほうがいい。

退職後の時間をどう過ごしていいか分からない人は、仕事の忙しさを隠れ蓑にして、自分の人生について何も考えてこなかっただけではないだろうか。家族のために頑張っていると思って走り終えてみれば、心の距離が遠のき過ぎて、結局自分の居場所がなくなっている。それは、それまでの自分の生き方のツケが回ってきただけだ。

それにしても、退職後はそれほど暇を持て余してしまうものなのか。外国の人は、早くリタイアするのが夢というが、私の周りでは、なるべく長く働きたいと思う人が多く、65歳を過ぎて尚働いている人も結構いる。その理由の一つには、暇が怖いというのがあるのかもしれない。

そう思うと、人間は複雑だ。仕事をしている間は、自由な時間を切望するのに、いざ溢れるほどの時間ができると、使い方に困ってしまう。それは結局、自分の人生に、ビジョンがあるかないかの違いだろう。働くのは、自分のやりたいことを実現させるための手段であって目的ではない。そこがきちんと分からない限り、リタイアした途端に悩んでしまう。

人生を有限と意識するだけで、自分の生き方が変わる。自分のやりたいことに向かっていれば、瑣末な技などにとらわれる事なく、充実した日々を送ることができる。

できれば私も、早くリタイアして、有限の時間を心残りのないように過ごしたい。いざその時が来て、こんなはずではなかったと気落ちしないよう、自分のやりたいことに向けて怠りなく準備したい。