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照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

母さんと僕と弟の初ヨーロッパ ① 遠い日の思い出

*〈これから数回、かつて親と出かけた旅行が、子の目にはどのように映っただろうと、立場を変えて書いてみることにした。想像力の欠如著しい私ゆえ、子供らしからぬ表現は、ご愛嬌と読み流して頂きたい。〉

母さんと僕と弟は、ロンドンとパリへ行くことになった。ゴールデンウイーク前に二日間だけ学校を休めばいいと、勝手に母さんが決めた。もちろん僕も弟も大賛成だ。仕事を休めない父さんと一緒にお留守番するよりは、母さんについていく方がずっといい。

僕は中学1年生で、弟は小学4年生。でも一番の心配は、フランス語どころか英語もできないへなちょこ母さんだ。おまけに海外旅行は二度目。前の年の夏休み、ロサンゼルス近くに住む母さんの従妹を訪ねがてら、アナハイムにあるディズニーランドへ行ったのが初めてだ。

母さんは、ハンバーガーを頼むのにも苦労した。何度ハンバーガーと言っても、通じない。(母さんが従妹の人に後で聞いたところ、イントネーションが大事ということらしい。)ようやく解ってもらえたと思ったら、トマトはいるかとか、いちいち中に挟む野菜について聞かれた。弟は野菜が大嫌いなのに、母さんは全部にイエスと答えていた。僕らは、飢えることなく旅ができるだろうか。

頼りにならない母さんに代わって、結局、僕ががんばるしかない。僕だって、英語の授業がこの4月から始まったばかりだ。何も話せないが、せめて食べ物の名前くらい言えるようにしておこう。それと、自分が行きたい所は、母さんのガイドブックでこっそり研究しておくことにした。母さんをびっくりさせてやろう。 

*母の独り言
長男は私と違って何でも徹底的にリサーチするタイプだが、その萌芽がこの頃であったとは驚きだ。また、私のへなちょこぶりが、そこに大いに貢献していたとは、年長者のプライドからすればやや複雑で素直に褒められない。だがこれからは、(威張られちゃう?〉のを覚悟して、教えを乞う事にしよう。何しろ今年4月のローマ行きでは、大事な情報を聞き逃し、後の祭りとほぞを噛んだくらい間抜けな私であった。