照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

見えない価値についてーある例からの一考

数値では計れないもの、いわゆる見えない価値について考えていた時、友人から聞いた話が重なった。これまでにも、消費や行動の心理を分析した、人は空気に左右されるというような本もあったが、労働意欲に関してもまったく同様だなと思いながら聞いていた。

これはどこの職場でも起こりうる普遍的な事かと思い、敢えてその話をお借りすることにした。但し、迷惑がかからないよう多少状況を変えてある。

友人の職場は一般企業ではないため、売り上げのノルマのようなものはないが、費用対効果の観点から、その仕事の成果を判断されるという。事務所の長が代わってしばらくたった頃、本部から、人員を一人減らすように要請があったそうだ。

その職場では、1年更新の契約で、既に複数年働いている人ばかりだ。誰が削減対象になるか、皆何となく落ち着かない気持ちでいた。やがて、的となったのが誰か分った時、友人をはじめ、職場の殆どの人がただ驚いてしまったという。

勤務年数も長いその人の、仕事への向き合い方、誠実な態度、人への配慮の仕方は、周りの人へも好影響を与えていた。むろん成果という面からも、遜色はない、まったく何を基準に選ばれたのか不可解であった。また、選ばれた当人にとっても、同様の思い、それ以上の葛藤もあったようだが、彼女は、黙ってそれを受け入れた。

本音では、皆辞めたくはないが、自分でなかった事に安堵するよりも、その人が選ばれたことが、職場内の空気を重くしはじめた。あの人がターゲットにされる位だから、自分だっていつどうなるか解らない。自分の立場の不安定さを、改めて考えざるを得なかった。

すると程なく、皆からも優秀と一目置かれていた人が、この件をきっかけに、この職場に見切りをつけ、自分から更新を断ってしまった。事務所内には、さざなみのように更なる動揺が広がった。それこそ事務所長をはじめ、誰しもが予期しなかったことだ。皆の間で急速にモチベーションが低下し、当然ながら、それは大きく成果に影響した。

結局、事務所長の、見えない価値の見誤りが、事務所内での成果、ひいては自分の評価まで下げることになってしまった。

これは、日本だけに当てはまることかもしれないが、人が働く場では、空気、言い換えれば、雰囲気とか社風がいかに大事かという顕著な例ではないだろうか。人をただコマのように簡単に動かす人事は、かなり多くの職場で行われていると思うが、もっと見えない価値にも考慮する必要を感じる。
その2に続く