照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

彼岸花に寄せて

昨日は彼岸の入り。今の時期、あちこちで見られる曼珠沙華もそろそろ終わりだ。

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散歩の折  植木鉢の曼珠沙華

子供の頃、この花が怖かった。秋の彼岸時、墓地の回りに咲いている真っ赤な花を目にすると、臆病な私は、家に飛んで帰った。スッと伸びた細い茎に咲く大きな花は、何とも気味悪く、夜に思い出すだけで、うなされそうであった。

大人になっても、どうにも好きになれなかった。根には毒があるから触ってはいけないという、親の言いつけをずっと守っていた。多分、私をこの花から遠ざけていたのは、墓地と毒からの連想だったのだと思う。 だいたい、墓地の近くを通ることさえ苦手であった。彼岸花という呼び名からして、子ども心に不気味であった。

墓地に多く植えられていたのは、土葬が多かった頃の知恵だろうか。調べてみると、やはりモグラや野ねずみから墓を守るためであった。

田の畦道でもよく見られるということだが、まったく記憶にない。見たくない思いが、記憶を妨げているのかもしれないが、わざわざ田圃まで行く用事もなく、見る機会がなかったのだろう。

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高知 とさ電の側で見つけた白い花

今は、季節を感じさせてくれる花として、見つけると嬉しい。通勤に利用する電車の沿線にもあって、目を楽しませてくれる。散歩していると、赤だけでなく、白や黄色の花に出会うこともある。

春秋どちらでも、彼岸の中日に亡くなったら本望と言って、偶然その通りになった母。常々、どこからでも手を合わせればそれで十分、墓前まで来るに及ばずと言っていた。どこまで用意のいい人だったかと感心しながら、青い空を見上げて合掌。