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照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

子どもは正直ー思ったことを言葉にする

ママと一緒に、お兄ちゃんを幼稚園へ送りに行く途中の3歳くらいの女の子が、日傘を差している私を見て、「かさ さしているひと いる」とママに教える。

前を歩いている私に遠慮したのかママは、気のなさそうに小さく「うん」と答える。

小さな子は、思ったことをすぐ口にする。きっとママは慌てているに違いないと、傘の中で私は、可笑しさを堪えていた。折しも、朝の日差しは、すっかり雲で覆われている。せめて晴れていたら、日傘って言うんだよと答えようもあるが、何とも中途半端な空だ。

もっとも、紫外線避けなんて教えたら、紫外線って何とか、何のためにそうしているのなんて質問が飛んできそうだ。ここはひとつ、その話題はお終いという感じを漂わせておいた方が良いと判断したのかもしれない。

電車に乗っていると時々、次から次へと、何で何でと追及の手をゆるめない子へ、「何でもなの」と強引に終わらせてしまうケースもままある。話題によっては、目の前の相手への配慮という場合もある。

少し話は違うが、口ごもらざるを得ない状況ということで、思い出したことがある。

次男がまだ2、3歳くらいの時のことだ。長男を幼稚園へ送った足で、耳鼻咽喉科へ連れて行った。人に聞いて初めて行ったのだが、ドアを開けて中へ入ると、ずいぶん古めかしく、そのひっそりとした雰囲気にややたじろいだ。

朝一番とはいえ、待っている人は誰もいない。すぐに診察室に通され、先生が現れた途端、次男は大泣きを始めた。背が高く瘦せぎすで、いかにも神経質そうといった感じの先生は、親の私から見ても恐そうであった。

すると先生は、「なぜこの子は泣いているのですか」と、恐い顔のまま、早く黙らせろと言わんばかりに私に聞く。まさか、先生の顔が怖くて急に泣き始めたのですとも言えず、「さあ・・」と言って黙っていた。

すると、「いつもこうなのですか」と、更に怒ったように言う。いつもお世話になっている小児科をはじめ、他でも泣いたことなど一度もなかった。またもや私は、「いや・・」と口をもごもごさせただけで、答えようがなく何とも困った。

結局、診察が終わるまで泣き止むことはなかった。しかし、恐怖で凝り固まっていた次男だが、外へ出るとケロリと泣き止んだ。そして、この医院へもこれ限りであった。