照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

物は贈るのも贈られるのも苦手

私には贈答の習慣があまりないので、人に物を贈るのは苦手だ。そのため、お礼やお返しとして何かあげる場合は、紅茶にお菓子かお菓子のみ、もしくはスタバカードと決めている。逆の場合、私は基本的にお菓子を食べないのだが、それでも頂くとしたら、やはりお菓子とか紅茶のような消え物が有難い。お菓子は、甘好みの人にお裾分けできる。

だが本音を言うと、何も頂かない、もしくは手紙だけが一番嬉しい。自分の欲しい物はその都度自分で買うし、その時必要としない物は、先々になっても使わないからだ。せっかく頂いた物を捨てるのは忍びないし、かといってずっとしまいっ放しというのも、くださった方にも、物にも申し訳なく思う。本当に悩むところだ。だから、物は、極力頂かないようにしている。

それが先月退社に際して、沢山の方から、ずいぶんいろいろな物を頂いた。自分では思いつかなかったけれど、頂いてとりわけ重宝した物の一つが、撥水性のあるポリエステルの風呂敷だ。96㎝四方の大判で、色、柄共におしゃれなので、スカーフにもできる。これなら、夏、冷房の効いたところでも安心だ。実際旅行に持っていって、寒さ対策に、とても役だった。風呂敷と思えば、気軽に惜しげも無く使える。ちなみにそれは、超撥水性風呂敷「ながれ」の楽器という柄だ。

もう一つは、千代治のくつ下セット。足が冷える人にぴったりで、冷えとり、重ね履きと4足でワンセットになっている。私が、事務所内は足が冷えるとしばしば言っていたので、探してきてくれたようだが、その心遣いが嬉しい。長時間乗り物に乗る時は殊に足が冷えるので、これらが俄然力を発揮する。

頂いた中では、お菓子が多かったけれど、お箸とかグラス(但し二重構造のチタン製という恐縮するような高級品)のような日用品もあって、なるほどと参考になった。とは言うものの、すぐに使いたくなるワクワク感からはやや遠い。大変申し訳ないが、困った物の筆頭が、ブリザードフラワー入りのオルゴール付き小物入れだ。重くて場所も取るので、どうしようかと悩んでいる。

いずれにせよ、贈り物ってやはり難しい。日頃から、見て歩くのが好きな人はともかく、私のように、買い物に行っても、目指す売り場に一直線というのでは、贈るセンスは磨かれない。まして自分が、物を持ちたくないタイプなので、相手が、どのような物をもらったら喜ぶかなんて、見当もつかない。

もう20年以上も前になるが、若い人から、バレンタインデーの贈り物の相談をされたことがあった。私自身現在に至るまで、仕事でも個人でも、ただの一度もバレンタインデーに何かあげたことがない。それなのに、何か印象に残る物をあげたいのだが、何が良いかしらと聞かれ、大真面目に、鯵の開きはどうと提案してしまった。よほど呆れたのか、数日は口を聞いてくれなかった。

それを思い返すにつけ、私などいまさら練習しても、贈るセンスなど磨かれないかもしれない。それなら、お菓子が無難なところか。それも、自分で普段使いには買いにくい、でも頂くと嬉しい高級品とか。

人に物を贈るのも、贈られるのも、実際大変だ。外国のように、家族や親戚間での、クリスマスの贈り物の習慣が無くて本当に良かったと、映画『ブリジット・ジョーンズの日記』のワンシーンを思いだしながら、しみじみ思っている。