照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

カメムシに興味たっぷりの幼子

図書館で本を読んでいたら、3歳くらいの男の子とお父さんが隣に座った。男の子は本を開いたまま時々お父さんに話しかけるが、黙って読んでいてと指示される。だがそれも束の間、「おとうたん」と、声を潜めて尚も驚きを父に伝えようとする。お父さんも、自分がパラパラめくりたい本があるので何とか静かにしていてもらいたいが、子はそんな事情にはお構い無しだ。

何がそんなに面白いのかと、気になってそっと覗くと、昆虫図鑑で、しかもカメムシのページであった。カメムシのさまざまな生態に、「これも?これも?みんなカメムシなの?」と、いちいち父に問いかける。「うん。そうだよ」と小さな声で答えながらも父は周囲に配慮して、「図書館だからね。静かにしなくてはだめなの。だから声を出さないでね」と、何度か言うも効果はない。

カメムシに興味を持つ子が珍しく、私もつい横目で見てしまう。枯葉にくるまるようにしているカメムシの図に、「寒い時はそういうところにいるんだよ」とお父さんが言うとすかさず、温かい時はどうしているのと聞く。推測するに、お父さんもカメムシの生態には詳しくない、もしくは興味がなさそうで、隣のテントウムシに注意を向けようとするが、結局カメムシに戻ってしまう。

自分の本が少しも開けないお父さんはやがて諦めたように、「お母さんが待っているかもしれないからもう行こう」と、子を促して席を立ってしまった。こんな楽しい会話、もっと聞きたい思いであったが残念。

しかし、もしあの強烈な臭いを嗅いだら、彼は将来的にもカメムシに興味を抱き続けるだろうか。それとも、むしろもっとのめり込むだろうか。そして、もしカメムシを飼いたいなどと言い出されたら、お母さんは困るだろうなと、長男がさまざまな虫を飼った頃を思い出して、何だかどうでもいいことが気になった。

それはともあれ、余所ながら、これからもいろいろなことに興味を持ってほしいと願う。子どもの心には、ワクワクが詰まっていると改めて感じた日であった。