照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

もう一度見たい『潮風のサラ』ー農夫役のクリストファー・ウォーケンが光る

私はクリストファー・ウォーケンが大好きだ。『ブルースが聞こえる(Biloxi Blues)』のトゥーミー軍曹には、当初まったくなじめず、従って名前も知らなかった。それでも、何となく気になる俳優さんではあった。

会社で同僚たちとお昼を食べていたら、年若い同僚がいきなり、「気持ち悪いこの人」と言うので、テレビ画面に目をやると、トゥーミー軍曹であった。同僚の手前私は、(わっ!この人だ)と心の中でつぶやき、その時しっかりと、クリストファー・ウォーケンの名前を記憶した。20数年前のことだ。

そして、ビデオ屋さんから出演作品を次々と借りてきた。販売コーナーで見つけた、『ブルースが聞こえる(Biloxi Blues)』は買って、擦切れるまで何十回も見た。自伝的な三部作と言われるこの作品の前後、及び他の作品についても知りたくて、ニール・サイモン戯曲集も購入した。でもやっぱり、ビロクシー・ブルース(Biloxi Blues)に肩入れしてしまう。

これは、第二次世界大戦中に徴兵された若者たちが、ビロクシー(アメリカ・ミシシッピー州)の訓練所で過ごす日々を描いた物語だ。訓練中のユージーン(主人公)たちとトゥーミー軍曹とのやりとりが、いちいち可笑しい。殊にエプスタインのヘマぶりは、見るたび笑ってしまう。だが、地獄耳のトゥーミー軍曹は、何から何までしっかり聞いているので、ヘマをした時でもうっかりしたことはつぶやけない。やがて、訓練の成果をみる前に終戦を迎える。

この映画も、ビデオテープが切れて以降見たことはないが、今でもほとんど全編が浮かんでくる。どこがそんなに気に入ったのか、自分でもよく説明がつかないが、一種の青春群像といったところに惹かれたのかもしれない。そして、青春のふわっとした空気を、ピリッと引き締めているのが鬼軍曹演じるクリストファー・ウォーケンだ。

しかしこの頃は、クリストファー・ウォーケンが出演する映画も以前ほどにはチェックしなくなってしまった。だが、好きな俳優さんに変わりはない。

なぜ唐突にクリストファー・ウォーケンを持ち出したかといえば、このところ高倉健さんに関する本を読んでいて、そこにディア ハンターに言及されている箇所を見つけ、妙に懐かしくなってしまったからだ。ちなみにそれは、ロバート・デ・二ーロの演技についてであったが、私としては、やはりクリストファー・ウォーケンに反応してしまう。

ところで、もうだいぶ前になるが、クリストファー・ウォーケン主演のアメリカのテレビドラマ、『潮風のサラ』(三部作)をNHKで見たことがある。その時演じた、ジェイコブという農夫の役は本当に良かった。どうしていつもこんな狂気じみた役ばかりという思いを、払拭してくれた。以来、この役が私のベストワンだ。サラを演じたグレン・クローズも好きな女優さんだ。これだけは、もう一度見たいと思う。