2016年ポルトガルの旅 日本刺繍の素晴らしさに グルベンキアン美術館その2
鳳凰のモチーフ (日本刺繍部分)
イスラム美術に感激したまま尚も進んで行くと、ガラッと趣が変わって、蒔絵のようなものが展示されている。ずいぶん日本的だなと思って見ていたら、やはり日本の工芸品を集めたスペースであった。印籠がだいぶある。日本美術はどのような基準で集めたのだろうかと、むしろそれが気になる。
とりわけ見事なのは、鳳凰をモチーフにした刺繍だ。刺繍には結構興味があって、これまでも行く先々の国の美術館や教会(法服に施された刺繍)で目にしてきたが、今回、改めて日本刺繍の素晴らしさを再認識させられた思いだ。
これらを見た後では、レンブラント以降の作品は一応見ておくかくらいになってしまった。ちなみに、『老人』と並んで展示されている『アレキサンダー大王』は、ガラスケースに光が反射して上手く撮れなかった。
レンブラント 『老人』
ところで、ルネ・ラリックの作品が展示された小部屋は、ファンというほどでもない私にとっても、なかなか見応えがあった。
この美術館は、アルメニア人・カルースト・グルベンキアンの個人コレクションということだが、石油王って、ロスアンゼルスのポール・ゲッティ美術館にしろ、まったくどれくらい富があるんだと唸ってしまう。
美術館を出て、そのままエドゥアルド7世公園に向かう。ここからはテージョ川まで見渡せる。広々として、まったく気持ちの良い場所だ。
だが、サングラスをしていても眩しいほどの陽射しに、日陰を選んで歩く。本当は日傘を差したいくらいだが、帽子を被っている人だっていないので、用心のためには郷に入れば郷に従えだと、周りの人たちと同じようにする。
またもやロシオ広場まで歩き、サンタ・ジェスタのエレベーター近くにある観光客向けの店でパエリャを食べる。ここへは昨年も来た。
上 今年 ちょっと食べ始め 下昨年の暮
お米料理は2人分からという店がほとんどだが、昨日のリゾットの店同様、このような店では1人前から注文できるので、価格はさておき、疲れ気味の胃のために、お米料理を求めてつい来てしまう。何と言っても、私には量がちょうど良く食べやすい。
食事してから、コメルシオ広場を抜けてテージョ川まで行き、その辺りに座って川を眺めていた。私は、広々として見晴らしがいい場所が好きだと、改めて感じる。
こうして、自分が景色の一部と化していると、旅先という感覚も遠のき、何とも言えず心地良くなってくる。日曜日の午後の過ごし方としては申し分ないなと独り言ちながら、こんなにゆったりとして、身も心も寛ぐ思いをしたことは、果たしてこれまで、どれほどあっただろうと来し方を振り返る。
すっかり良い気分のまま、バイシャ・シアードからメトロで帰る。この日も、駅から直結しているエル・コルテ・イングレスの食品売り場に立寄ると、フードコートは、昨日の土曜日以上に混雑していて結構な行列だ。私はその列を横目に、翌日朝用のパンに果物類を購入してからホテルへ戻る。