照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

巨石の村モンサントを振り返って

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モンサント 巨石を利用した家(再度掲載)

昨年末から正月にかけて初めてポルトガルを訪れたのだが、その時一番行きたかったのが、実はモンサントであった。巨石を利用した家の写真を見ながら、岩だらけの荒野に、ポツンとある村のイメージが浮かんだ。だが、前回は年末年始でバスの便も悪く、結局もう一つの候補であるマルヴァオンに絞ったため、今回行くこととなった。

その後行き方など調べるうちに、山の上の村ということが分かったが、一度抱いたイメージは、実際目にするまでずっと私の中に残った。山の上にしても、その麓一帯には人家はおろか木々すらなく、荒涼としているような気がしていた。

しかし、予想に反して、麓の村にはオリーブの木々が繁り、ちょうどその実の収穫作業をしているところであった。むしろ、カステロブランコから乗り継ぎ地のイダーニャ・ア・ノヴァに向かう道路沿いに、私が思い描いたような風景があった。

大きな岩だらけの野に目をやりながら、これでは土地の有効活用など全く無理だろうと思えた。次いで、若い時分に見た『糧なき土地』という、スペインの山岳地帯に暮らす貧しい人々を描いた映画が蘇ってくる。当初モンサントに抱いたイメージは、きっとこの残像だったのかもしれない。だから、そのような所にあえて住む人々に関心が向いたのだと思う。

だが、いざ目にする村は、岩山にへばりついてはいても、それは単なる立地上のことだけであって、そこにはごく普通の暮らしがあった。聖なる山であり、かつ要塞としての機能も果たしていた村には、カフェもレストランもある。土日は、観光客の数も相当なものだという。

今時、隔離されたように孤立した村など、アマゾンのよほど奥地にでも行かなければないだろう。ひとたび珍しいとなれば、その情報はたちまち広がって、人々が押し寄せる時代だ。現に私もその一人だ。

別に、過去に取り残されたままの、異次元の空間を求めたつもりではないが、自分の中で勝手に作り上げたイメージとの違いにやや戸惑う。だがそれらを振り払い、改めて五感をフルにして、その土地の雰囲気を掴むのはまさに旅の真髄だ。

その記憶を辿りながら、その時言い表せなかった思いを、言葉に乗せてみる。風になり、鳥になって、風景を、自分自身を俯瞰してみる。現実には終了したのだけれど、私の旅はこのようにして今しばらく続く。