照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

自分は人とは違って個性的ーそれは大方の人が考えていることだ

モンサント(ポルトガル)へ向かう時たまたま道連れになったOさん。彼女の話を聞きながら、これまであちらこちらとよく一人旅してきたなと少々驚いた。

ツアー参加に個人旅と、年数回出かけているくらいだから、当然旅慣れているはずだが、やることがどうにもちぐはぐなのだ。それが、よく回って来れたなという感想となった。

一人旅というと、個性的でカッコ良い人というイメージがあった。私もその言葉を口にする度、ちょっと誇らしげな気分であった。だが、実際、そんなものは幻想でしかないと、Oさんの出現で気づかされた。一人旅なんて特別なことでも何でもなく、誰にでもできることなのだ。

旅から帰って、時折そんなことを考えていたら、『選択の科学』(シーナ・アイエンガー著・櫻井祐子訳・文藝春秋・2010)に、なるほどと膝を打つ言葉があった。

"わたしたちは、自分はほかとまったく違う、個性的な存在なのだと、ことあるごとに自分に言い聞かせ、周りの人にもそれをわからせようとする。"(P・111)この現象を指す用語は、「平均点以上効果」というそうだ。そして、"九割方の人が、自分は全体的な知性と能力で見て、上位10%に入ると考えているという。"(P・111)

私なども、まさにこれだなという思いだ。一人旅に限らず、人と違うことがしたい、つまり個性的でありたいなんて考えたところで、大方が同様のことを考えているのだから、我彼に大差はない。つまらぬところで見栄を張ったってしょうがないと、自分の中のとんがった部分が、ストンと落ちた気分だ。

余談になるが、占い師たちは、このだれにでも当てはまる一般論を上手く使っているそうだ。内容が重複するが、興味深いのでそのまま引用する。

"一、人は自分が思うほど他人と違わない
二、人がもっている自己像や理想像は、大体同じ
三、だれもが自分は個性的だと思い込んでいる
・・・
予言者はこの三点を頼りに賭けに出て、たいていは期待通りの効果を上げる。・・・魔法の力などなくても、具体的で、的を射て射て、当たっていると思わせるような占いができるのだ。"(P・109)

この本、私は今頃になって初めて知ったのだが、ここで取り上げた第3講「強制された選択」だけでなく、どの講も非常に面白い。

ところで、

"あなたは自分らしさを発揮して選んだつもりでも、実は、他者の選択に大きく影響されている。その他大勢からは離れ、かといって突飛ではない選択を、人は追う。"(P・107)

という、研究から導き出された言葉がガツンとくる。

つまるところ、ワタシもアナタもごく普通なのだ。それでも自分は・・・、と個性を強調したいなら、大勢からかけ離れた突飛な選択をするしかない。

旅でいうなら、行き先やルートにスタイルすべてひっくるめて、エキセントリックでいくしかない。でも、心地よいかどうかは疑問だ。結局人は、他者より頭がちょっと出ているくらいが快適なのだ。自分がドングリの一個と自覚したら、マウンテングなんて意味のないことだと気づく。