照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

『映画を食べる』ー池波正太郎

『映画を食べる』(池波正太郎著・河出文庫・2004年)を読んでいると、無性に映画が観たくなってくる。

池波正太郎の銀座日記』も、映画と食の話が満載だが、こちらの方が、自分が実際に見た映画と多くが重なるので、面白味がグンと増す。更には、もう一度見て、池波さんの言わんとするところをおさらいしたくなる。

この本の前に『青春忘れもの』を読んでいて、池波さんが若い頃から、どれほど映画や芝居、食にのめり込んでいたかを知り、改めてその徹底ぶりに驚いたが、その下地があるからこそ、淀川長治さんいうところの「映画を知る人」であることがよく分かる。

『映画を食べる』の巻末で淀川さんは、「(解説にかえて)思うこと」に次のようにお書きになっている。

"小説を書き舞台劇を書きさらに演出されるという人が映画について書かれるその内容には「見せる映画」のカンどころが見事に掴まれ「映画の見どころ」がピシャリと握られているのである。"(P・265)

池波さんの本からは、「映画の見どころ」ばかりか、物事の見方から生き方すべてをひっくるめて教えられている思いだ。幼い頃から親しんだ映画や芝居から、池波さんご自身もまた育まれたのではないかと推測する。『青春忘れもの』にでてくる、一五世市村羽左衛門からサインをもらったエピソードに、そんなことを思った。

池波正太郎さんのエッセイは、銀座日記にしろ、繰り返し読んできたが、それでも興味が尽きない。読むたび、自分も少し賢くなってゆくような錯覚さえ覚える。だが、本当にはまだまだ理解が足らない。本を参考に映画を見ても、最後は自分で考えるしかない。