照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

ほのぼのとした絵本のような写真集『ブタとおっちゃん』

『ブタとおっちゃん』(山地としてる・(有)フォイル・2010)は、絵本みたいな写真集だ。昼寝するおっちゃんの横で、安心しきって眠る子豚。そこに漂うほのぼの感が、たまらなく良い。

子豚ばかりか、おっちゃんの側にいる動物は、皆安心しきって身体を伸ばしている。犬には闘志丸出しに歯を剥き出す子猿も、おっちゃんにもたれて気持ち良さそうに居眠りしている。この猿の、おっちゃんと一緒の時の表情が何とものどかだ。

母豚の後からゾロゾロとついて歩く子豚たちを撮った一枚は、まさにピーターラビットの世界だ。この豚一家の物語が、目の前に浮かんでくる。

だが、この豚たちはペットではなく、肉として出荷するため飼育されている。(*現在この養豚場は無い)写真集のあとがきによると、通常3ヶ月で親と離すところを、ここでは4ヶ月親の側に置くという。そうすると、子豚のストレスが緩和され、肉質も良くなるそうだ。

確かにこの写真集を見れば、子豚たちが如何にゆったり日々を過ごしているかが一目瞭然だ。豚だけでなく、牛も馬も鶏も猫や犬、猿まで、みんなおっちゃんを親の如く慕って、寛いで暮らしているのが良く分かる。

周囲の苦情で、養豚場の移転を余儀なくされたおっちゃんを、市役所の担当者として気にかけ、退職後10年通ったというだけあって、撮る方もまた、この風景に同化していたのだろうなと思う。そうでなければ警戒されてしまって、動物たちのこんな表情は撮れない。

これまで、写真そのものに関心が薄かったけれど、この写真集を見て、俄然興味が湧いてきた。しかし写真は、その中に、撮る人をも丸ごと映し出すのだと、改めて思い至った。誰にもおすすめの一冊だ。