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照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

ユーモラスな語り口に耳を傾けているうちに、〈なるほどね〉と納得する本

『望遠ニッポン見聞録』(ヤマザキマリ著・幻冬舎・2012年)を手にしたら、テーマごとのイラストが面白く、早速読んでみた。私は、ヤマザキマリさんのお書きになるものが好きだ。物の見方、考え方に共感することが多い。というよりもむしろ、(ああそうか)と気づかされることばかりだ。
海外に長く暮らしている日本人がお書きになるものは、ややもすれば、どこかエラソー感が拭えない。でも、ヤマザキマリさんの場合、上から物申す的な感じはなく、ユーモラスな語り口に耳を傾けているうちに、(なるほどね)と納得してしまう。
自分の意見を持ち、かつ自己主張をしなければ頭が空っぽと見做される社会で、17歳から厳しく鍛えられた彼女は、まったく逞しい。かといって海外在住者にありがちな、「だからダメなのよ」とばかりに、日本人の持つ相手を慮る等の良い面をサッサと捨て去ったりはしない。
"日本という世界の複雑さと面白さは、こうして長く離れて暮らしていると、よりはっきり見えてくるものなのだ。"(P・14)とお書きになっているように、違いは違いとして面白く眺めている。
啓蒙しようなどとは露ほども考えていないところがこの本の良さで、しかし読み終えてみれば、こちらもいろいろと頭を巡らせ始めていることに気づく。つまり、ご高説拝聴ではなく、ヤマザキマリさんの目を通して、自分の思考の幅が広がる感じだ。
また、言わんとしていることをイラストが更に後押ししてくれるので、それは復習効果となって、読んだ後もそれぞれのエピソードが頭に残るため、こちらの思考も長続きする。
ちなみに、"【その1】世界を飛び回る、世界一幸福な人たち。"(P・13)で描かれた、旅行中の日本人とアメリカ人オバサンの比較図は凄い。絵を見ているだけで、防犯対策の意識もバッチリ刷り込まれる。
短髪でサングラス、背にリュック、逞しい腕を出したタンクトップにオシャレ度0%ヨレヨレの短パン、スネ毛もそのままに足元は履き込んだサンダルという出で立ちで、"男か女かわからんササクレオーラ"を出している人物像に、てっきり男性かと思った。これじゃ当然スリも、"しあわせオーラ"全開の日本人をターゲットにするわけだとよく分かる。
教育や政治、オシャレから食、はたまたトイレまで、テーマは多岐に渡って、側に座っておしゃべりを聞いている感覚で読んでしまった。まったく話し上手な方で、その話術にすっかり惹かれている。