照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

マドリッドからメリダへ電車で移動〜いろいろ戸惑うこと多き旅なり

マドリッドからメリダへはバスもあるが、所要時間は電車と同じく5時間(特急バスで4時間)だ。バスの方が便数は多い。迷ったが、車窓からの風景に期待して結局電車で行くことにした。

 

何しろ、バルセロナからサラゴサまでのバスも、サラゴサからマドリッドまでの電車(AVE)も、どちらも窓の外には殺風景な景色ばかりが続き、まったくつまらなかった。地理的な問題なのか、それとも新幹線のような高速列車だからいけなかったのかなどと考えた末に、もう一度電車に乗ってみようとなった。

 

当日の朝、駅構内のカフェで朝食を済ませてから、自分の乗る列車は何番線かと確認しに行った。だが、同じ時刻の列車はない。他に電光掲示板は見当たらないしと、探しているうちにセルカニアス駅の方まで来た。(アトーチャ駅には、近郊線が発着するアトーチャ・セルカニアス駅と、プエルタ・デ・アトーチャ駅があり、隣接している。)

 

近郊線のわけはないしと、困ったまま立っていると、自動改札を回り込んだ先のデスクに係員が2人いるのに気づいた。ここで聞いても、あちらと言われそうだしなと躊躇っていたが、誰かがデスクに近寄って質問している。人がいると聞きやすい雰囲気になる。私もすかさず後ろに並んだ。

 

係員の一人が、どうぞと促すので、切符を見せると、アッサリここでいいと言うではないか。私がエッという顔をしていたのか、電光掲示板を指差して教えてくれる。行き先の表示はメリダではないが、確かに10時18分発の列車がある。

 

エスカレーターで下に行き、乗車ホームが掲示されるまで、椅子に座って待つようにと親切だ。そして、デスクの横の入り口を示してくれたので、そのまま中に入る。(*地方行きの一部列車はセルカニアス駅から発車と後で知る。ちなみに手荷物検査はない)

 

発車20分位前に9番線と表示されたので、エスカレーターで更に下の階へ行く。待っていると程なく列車がホームに入って来た。4両編成と短い。私の切符には1号車とあるのに、車体番号は4号車から始まっている。やや不安はあるものの、仕方がないのでその車両に乗り込んだ。

 

座席はどこかと番号を確認していると間も無く、同じ車両に乗って来た女性がいたので、ここは1号車でいいのか聞いてみた。そうだという。これまでは、どこでも車体の番号を見て自分の乗る車両を確認していたので、ちょっと不思議な感じもするが、こういうこともあるのだとこれも良い経験とする。

 

ところで、楽しみにしていた車窓からの景色だが、これは残念ながら期待通りにはいかず、かなり飽き飽きしてしまった。

 

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麦畑

 

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麦畑の中に赤い花の一群

 

出発して1時間ほどは、あたかもローカル線の旅といった感じで、黄金色に波打つ麦畑に、「ゴッホの麦畑だ!」と浮かれたり、「麦の間にあんなに雑草(赤いケシの花や紫色の花)が混じっていて上手く刈り取れるのだろうか」などと余計な心配をしながら、それでも気分はウキウキ、ひたす眺めていた。

 

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ちょっと荒涼とした雰囲気が漂う

 

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 ハゲ山

 

やがて畑が姿を消すと、オリーブの林になる。そして、もっと大きな(多分)樫の木ばかりになってきたなと思っていると、その根元には牛や羊の草を食む姿が見られるようになる。が、次第に辺りは、ポヤポヤした頼りなげな葉をつけた木だけが目立つハゲ山になった。

 

ずっとそんな風景の中を、電車も、上ったり下ったりを繰り返しながらひたすら走っていく。沿線に人家はまったく見当たらず、停車駅も極端に少ない。高原列車かという感じで、遠くには雪を冠した山も見える。それにしても、人の暮らしというものが全然窺えない。家畜が放牧されているのだから、人家はあるはずなのにと不思議な気さえする。

 

乗車してから4時間、ようやくメリダの一つ手前カセレスに到着だ。私と同じ車両にいたほとんどの人が降りたが、乗ってくる人はいない。この電車、本当にメリダへ行くのだろうかと、ちょっぴり不安になってくる。車掌さんも荷物を持って降りちゃったしなという感じだ。でも、検札の時に、乗り換えがあるとも何とも言ってなかった。きっとこの駅で交代なのであろう。

 

そのうち、ようやく2・3人が乗ってきたのでホッとする。どれだけ心配性なんだと笑われそうだが、モンセラットからの帰り道、電車に乗り遅れたことがどうしても頭を過る。だからか、用心深くなっている脳が、この先、荒野のような所で途方に暮れるのは嫌だよと囁くのだ。

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ともあれ、たいくつなハゲ山にウンザリしつつ更に1時間。すると、突如広がる水辺の光景に、メリダはオアシスのような所かもと気分も上向く。

 

しかし、電車は駅の手前で止まってしまった。ホームでもない所で降りるわけないなと思ったが、降り遅れては大変とボタンを押してみる。やはりドアは開かない。

 

心配性が頭をもたげ、別の車両に移動して、ドアの近くに立っている乗客に、ここはメリダかと確認する。そうだと頷くので、そのまま一緒に待っていると、やっと電車が動き出しちゃんとホームに入った。30分遅れの到着なので、都合5時間半かかった。

 

でも駅に降りた途端、「は〜るばる来たぜメリダ〜」と、心配性もどこかへ吹き飛んですっかりご機嫌になる。それにしても32度とは、熱意あふれる(つまり暑い)歓迎ぶりではないか。