照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

リスボンは子ども心を刺激する街〜ケーブルカー・ピッカ線に乗ってウキウキと

リスボンへは、ヴァスコ・ダ・ガマ橋 から入るとばかり思っていたら、前方右手に巨大なクリスト・レイの背中が見えてきた。向かっているのは4月25日橋の方だと気づくが、前回(昨年11月)と同じ時間帯のバスで、しかも行き先は同じくセッテ・リオス バスターミナルなのに、なぜ経路が違うんだろうと思う。もちろんどちらもノンストップだ。
*クリスト・レイは、リオ・デ・ジャネイロ(ブラジル)にあるキリスト像に模して作られた高さ110mの像で、テージョ川の対岸からリスボンを見渡すように立っている。

 

全長17.2キロと長いヴァスコ・ダ・ガマ橋に、最初、ここは海なのかと戸惑ったが、地図で確かめると、その辺りだけ川幅が極端に膨らんでいた。大西洋へと注ぐ直前でキュッとすぼまっているが、そこに架かるのが今回渡る4月25日橋だ。こちらは、2.2キロ(正確には2277m)の吊り橋だ。ベレンにある発見のモニュメントや大西洋まで見えるので、景色としてはこちらの方が楽しめる。

 

やがてバスがリスボン市内に近づくと、緑の中にフワッフワッとした紫の塊があちこちに点在しているのが見える。ジャカランダだ。上から見るこの花は、色こそ違うが、ちょうど満開の桜のような感じで壮観だ。今の季節、どこでもジャカランダを見るが、地上からそれぞれの木を見上げるのとでは、また異なった趣きがある。

 

私の中では、リスボン3度目だし、ちょっと飽きちゃったかなという懸念もあったが、まったくそんなことはなかった。ジャカランダに迎えられて気分が高揚したというのもあるだろうが、それ以前に、リスボンは子ども心を刺激する街だ。子ども心なんて、当の子ども時代でも、あったかどうだかという私であるが、市電やケーブルカーに乗るのが楽しくてしょうがない。

 

小さな頃から乗り物酔いがかなり酷く、乗り物全般苦手であったという裏返しなのか、(時には酔い止めの薬を使用しながらではあるが)、今は乗り物が結構好きだ。(但し、遊園地は除く)

 

初めてリスボンを訪れた時は、一番人気の市電28番線の起点から終点まで乗車した。あまりに楽しくて、再度長い列に並んで同じルートを戻って来たりもした。ケーブルカーだって、見かけるとすぐ乗ってみたくなる。テージョ川を見下ろせるピッカ線などは、わざわざ探したわけではないが、たまたま前を通って乗ることができた。

 

ケーブルカーといえば、かつてサンフランシスコでも、地形によるアップダウンが楽しくて、何度も繰り返し乗った。但し、リスボンのあっという間に着いてしまうケーブルカーと違って、サンフランシスコの場合は距離が長く、むしろ市電の感覚だ。

 

リスボンでは、多分急坂対策なので、乗客を、坂の上あるいは下まで運んでお終いだ。でも、映画などでも目にするピッカ線は、さすが絵になるだけあって、地元民の足というよりも、今では観光客の方が多いような気がする。

 

ところでこのピッカ線、今回はあえて乗りに行った。最初は、カイス・ド・ソドレ駅でバスを降りてから地下鉄に向かったのだが、確か乗り場はこの近くであったと思い出して行ってみた。この路線は、なんと言っても川が見下ろせるのがいい。前回は坂を下ってきたので、運転席越しに見ていたが、今回は上りなので、後部座席に座って存分に景色を眺めることができた。

 

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ケーブルカーピッカ線  中央奥に見えるのがテージョ川

 

映画『リスボンに誘われて』でも、主人公が、ケーブルカーの横の坂を登って宿に向かうシーンが思い出される。ただ、カイス・ド・ソドレ駅周辺は、バスや市電が通る駅前の通りはまだしも、そこから中に入ると、昼間でもちょっと怖い雰囲気が漂う場所もある。

 

店もたくさんあって、慣れれば何ということもないのだろうが、ベンチで寝ている人や、うろんとした焦点の定まらない目つきで立っている、もしくは所在無げに腰を下ろしている人などの姿に、臆病な私はドキドキもので足も早まる。危ない場所のセオリー通り、割れた瓶やら紙くずも散らばっている。何でこんな所へ入ってきてしまったんだろうと思いながら、カイス・ド・ソドレ駅の方へ急いだ。昨年11月のことだ。

 

それより以前、ピッカ線を下りた後初めてこの辺りを歩いた時は、スーツケースを引っ張っている人を何人も見かけ、その後をついて駅まで行ったのだが、この周辺に宿を取るのも案外いいかもしれないと思えた。でも、今では用心センサーが作動して、泊まるどころか不要な散策もする気にはなれない。旅人という意識は常に必要だ。

 

というわけで、今回は、リベイラ市場の前を通り、横にある公園の手前で曲がってというように、なるべく、広くて人の多い通りを選んでピッカ線の乗り場へと向かった。私が着いた途端にケーブルカーは出発してしまったが、待つことにした。しばらく待つうちに人もどんどん増えたが、先頭にいたおかげで席も確保できた。もっとも、立って乗車したところで大した距離ではない。

 

このケーブルカー、本当に楽しくて何回でも乗りたくなるが、下りを待つ乗客が既に列をなしているので諦めた。ここから少し上に行くと、人気の市電28番線乗り場がある。乗ろうかなと一瞬心が動いたが、こちらも乗車待ちの人々でいっぱいだ。結局、地下鉄の駅まで歩くことにした。

 

リスボンでは、一見不便に思える起伏の多い地形自体がワクワクの素になっていて、乗り物ばかりか、フウフウ言いながら歩くのだってこれがまた楽しく、ズンズン足が進む。まったく旅の締め括りに相応しいよと浮かれ気味の私だ。

 

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ホテル近くのジャカランダ

 

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ホテル近くリベルダーデ通りの向こうにジャカランダ

 

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ホテル近くのジャカランダ

 

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ロシオ広場のジャカランダ