照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

名古屋での読書会2月 その2 〜オディロン・ルドンの絵を訪ねて岐阜県立美術館へ

読書会の前に、岐阜県立美術館へ行くことにした。この美術館にはオディロン・ルドンの絵がたくさんあるので、一度行ってみたいと思っていたが、今回は丁度良い機会であった。

名古屋から東海道線に乗り換え、西岐阜まで快速利用で約25分と近い。岐阜の隣駅にしては、駅前がずいぶん閑散としている。駅員さんに道を聞き、歩き始めると10分ほどで到着した。歩いている人はほとんどいない、車ばかりだ。

目当ての常設展から見て回る。展示作品はそれほど多くないが、いい作品が揃っている。熊谷守一の作品に、岐阜出身だった事を思い出した。この人の絵はとても好きだが、近頃とんとご無沙汰していた。

ルドンの絵は、一部屋にまとまっている。以前、東京・
丸の内の三菱一号館美術館で見た「青い花瓶の花」は、展示されていなかったのでちょっと残念であった。ロンドンのロイヤルアカデミーで見た絵もなかった。展示作品がどのタイミングで入れ替わるのか分からないが、機会を作ってまた行ってみたい。

ルドンの部屋の奥には、日本画がある。川合玉堂の、「深林宿雪」に、ふとペーテル・ブリューゲル(父)の「雪中の狩人」を思った。あのキーンとした冷たさが伝わってくる絵に比べると、日本の雪が大地を覆う様はずいぶんと優しく感じられる。布団が掛けられているようだ。

貸し切り状態の常設展から、企画展の現代アートへ回っても、観る人は数えるほどであった。東京の美術館を思えば、拍子抜けしてしまうほどだ。外へ出て、刻が止まったような景色の中で、暫しベンチに腰掛けていた。

周りの木々や浅い流れに目をやると、誰もいないのを幸いに、カラスが水浴びをしていた。一度上がって、また水に入る。バシャバシャと、何だか楽しそうだ。再び上がると、羽を広げて水を切る。それが済むと、サッーと飛んで行ってしまった。カラスといえども、鳥はやはり飛ぶ姿が美しい。

私も駅に向かって歩き始める。やはり、歩いている人は誰もいないが、日差しが心地よい。何の標語だろうか、「それでいいのか、今の君」と書かれた看板が、短い橋の手摺りにひっそりとある。もう少し先の、小さな川の土手には水仙が咲いている。あまりの長閑さに、こちらの気持ちもゆったりとしてくる。うらうらと駅まで戻れば、折良く名古屋方面行の電車がきたので乗車する。