照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

はらぺこあおむしからアゲハチョウへ感動の変身の巻

次はアゲハチョウだ。玄関横に植えておいた山椒の木に、蝶が卵を産んだ。小学生になった長男が、その頃取っていた子供向けの雑誌に、タイムリーと言うかはたまた残念なことにというべきか、蝶の生態が載っていた。カブトムシで慣れたとはいえ、私はまだ虫が苦手であった。

 
だが虫に気づいた長男は、すぐさま飼うと言う。今度は、以前使った水槽に、山椒の葉を枝ごと入れておくだけ、葉が少なくなったら足すだけと簡単だ。但し、時々掃除はする必要がある。
 
今回は世話しているうちに、青虫の目の回りの模様さえ、可愛いと思えてきた。子供たちの大好きだった絵本『はらぺこあおむし』(エリック・カール作)のようにも見えてくくる。
 
さなぎになって、やがて羽化した時は、またもや感動的であった。家族だけで見るのはもったいないと、長男は残りのさなぎを学校へ持っていった。それから数日経ったある朝、教室で蝶を見つけたクラスメートや先生は、とても喜んでいたと嬉しそうに報告してくれた。
 
ところが翌年、山椒の木にたくさんのアゲハチョウの幼虫を見つけた隣のおばあさんが、親切?のつもりか、こちらが気づく前に、勝手に悉くつぶしてしまった。それ以後、我が家の山椒に、アゲハチョウが卵を産むことはなくなった。
 
長男はがっかりした。私も少し残念ではあったが、諦めるしかない。すると今度は、カマキリを捕まえてきて、飼うと言う。いくら私が虫に慣れてきたといっても、カマキリを見て考えてしまった。
 
何とか止めさせたい思いで、飼い方がわからないから無理というと、図書館へ行って本を借りてきた。係員の方に事情を話し、探してもらったのだという。
 
厚い大人向けの本で、いろいろな虫について書いてある。それによると、カマキリは生きたハエとかゴキブリを食べるようだ。だが、それを捕まえるのは難しい。長男も私も、エサを探しきれなかった。よく言い聞かせ、見つけた公園に放しに行かせた。
 
カマキリ以来、親としては、もう虫は嫌だなというのが正直なところであった。長男自身も、急に興味を失くしたのか、それ以後、虫を飼うと言い出すことはなかった。何だかホッとした。
 
その後は、フナや金魚の飼育に関心が移った。だが、世話は全て、生き物を飼うのが苦手な私であったためか、あまり上手くはゆかなかった。やがて、長男の飼育熱も冷めた。何にでも興味を持つ子供だったので、虫好きも、一過性のものだったのかもしれない。
 
でもそのおかげで、私も、苦手としていた虫に多少強くなった。『はらぺこあおむし』は、今でも好きな絵本だ。あのように、愛情を持った描き方ができたらいいなと思う。