照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

人に仕事を任せ、見守る難しさ

京大・霊長類研究所で、長年チンパンジーの研究をされてきた松沢哲郎さんの話をラジオで聞いた。アイとアユムの研究でよく知られている方だ。

人科は4属で、オランウータンとゴリラとチンバンジーと人間だそうだ。遺伝子的に最も人に近いのが、チンパンジーだ。その差は1、2%というから驚く。 アウトグループであるチンパンジーの行動を研究することで、逆に人間が見えてくるという。

興味深かかったのは、チンパンジーの子育てだ。アフリカのボッソというところには、堅い油ヤシの実を割るのに、石を使うチンパンジーがいるそうだ。子どもも親の真似をするが、4歳くらいになるまでは、道具として石を上手く使えない。

チンパンジーのお母さんは、やり方を教えることなく、ただ正しくやって見せるだけという。その代わり、子どもが自分でできるようになるまでは、母親が割ったのを幾つもらってもいいらしい。

もう少しと思った場面でも、手を添えたりはしない。人間でいうところのアドバイスに類することは一切しない。また上手くできても、褒めたりしない。とりわけ印象に残ったのが、"チンパンジーのお母さんは見守りません"だ。つまり見守るというのは、極めて人間らしい行為とのことだ。

人に仕事を教える難しさを痛感している私は、見守らなければ、かなり楽だろうなと思って聞いていた。人間の私は、最初の2ヶ月は懇切丁寧に教え、仕事が滞ったら手伝うこともある。3ヶ月目からは、本人に任せて様子見状態だ。これが、なかなかハラハラで、見守るには、人の度量が試されると感じる。

転ばぬようにと手を出してしまえば楽だが、客先からお叱りを受けたりと、やはり自分が少々痛い思いをしないと自覚がでないのかなと思ったり。人が仕事を覚える過程を見守るのは、本当に難しいと感じているこの頃。いっそ、チンパンジーのお母さんを見習おうかと思案中の私だ。

チンパンジーの名誉のためのに書き添えれば、子どもから困った合図があった時は、お母さんは手を差し伸べて枝を渡るのを手助けするそうだ。但し、人のように、頼まれる前から手を出すことはしない。また、集団で移動する時は、雄が前後で群を見守るという。姿こそ違えど、太古の人の集団も、このようだったのかなと思う。