照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

医療否定本に惑わされず自分にとって最良の選択を

先日、同僚と久しぶりに会った折、挨拶より先に、「髪伸びたね」と、いう言葉が口を突いて出た。ベリーショートながら、帽子を被っていないその姿を見るなり、何だか涙がこぼれそうであった。
 
紹介された病院で、初めて診察を受けて以降、週二回づつの検査、ほぼ一ヶ月後には手術と、治療が急がれた病気であった。だが、病名がはっきりした時点でも、彼女は、周りが心配するよりずっとあっからかんとして、前向きであった。
 
術後の経過も良く、彼女が考えるよりは長い入院生活であったが、お見舞いに行った時も元気であった。だが、その後、抗がん剤治療が始まってからは、さすがの彼女も、心と身体にかなりのダメージを受けたようであった。
 
それでも、三回ほど治療が済んだ後に会った時は、終始笑顔で、むしろこちらが元気づけられる思いであった。ニット帽から覗くウィッグも、違和感がなかった。
 
そして、月一度の抗がん剤投与が終了してから数ヶ月経った今、マスクを付けずに外出できるし、生もの禁止の食事制限も取れたという。過ぎてみれば、あの日々は何だったのというほど、現在は快調とのことで、本当にホッとした。
 
私はこれまで、友人、知人に従妹と数人が、手術や、抗がん剤及び放射線治療の後、残念となった結果に、癌の治療そのものに疑問を抱きがちとなっていた。そしてどちらかというと、治療否定に傾きがちでもあった。
 
だが、今回彼女の様子をみて、意識が変わった。医療否定本は相変わらず店頭の目立つ場所に並んで、病気に悩む人を誘惑する。だが、何でもかんでも頭から否定するのではなく、ケースバイケースで、自分に合った治療を選ぶことが大事と思うようになった。
 
彼女自身病気になる前から、身体全般についていろいろ勉強していたので、抗がん剤投与については悩んだことだろう。でも、良い選択をしたと思う。あと2カ月もすれば、仕事にも復帰できる。本当に良かった。

それによくよく回りを見渡せば、癌の治療を受けた後、すっかりお元気になられ、以前同様に仕事をされている方が何人もいらっしゃる。悪い結果ばかりが続くと、良い方へは、目が向かなくなっていたと気づく。

癌を治療するか放置するかは、全く個人の考え方次第だが、医療否定本だけを信ずることなく、自分の状態をじっくり検討して、自分にとっての最良を選択して欲しいと願う。