照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

会社員最後の日に〜人の優しさだけが見えてくる

休暇に入る前、及び最終出社日の昨日と、会社の人たちや取引先から、数回にわたって送別会をして頂いた。そのいずれの会も居心地が良く、温かく包まれている感覚が心にじわっと沁みて、いつまでも余韻が残った。

 
正直、最終日の送別会は避けられないとしても、それ以外は全て辞退したいくらいであった。場を設けてくれることを有難く思う反面、人と過ごす数時間は、私にとってむしろ苦痛だろうと考えていた。だがいざ出席してみればどの会も、何 を躊躇っていたのか不思議なくらい会話も弾み、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまった。そして、心から寛いで人と接している自分にも、不思議な気がした。
 
これまで自分は、このような場で、どれほど真剣に人と向き合ってきたのかと、改めて考えさせられた。長く勤めている間には、ずいぶん沢山の会食の機会があった。でも、いずれも義務感からの最低限の出席で、早く終わらないかと、いつもそればかりが頭にあった。
 
それは、送別会の時もほぼ同様であった。今回、自分がその立場になって初めて、そのことに思い至った。もう少し、送られる側の思いに寄り添うことはできなかったのかと、今更ながら悔やむ。まったく冷たいようだが、私は、人と積極的に関わってゆくのが苦手なタイプだ。まして職場の人とは、一定の距離を置くようにしていた。
 
けれども今回は自分が主役、せっかく会を催してくれたことへの感謝もあって、場の雰囲気を高めるよう私なりに気も使った。以前はそのような気遣いで疲れてしまい、会食が更に嫌いになってしまっていたのだが、今回はそれが嫌どころか、非常に楽しいものとなった。もちろん、送ってくださる方々の力によるところが大きいのは、言うまでもない。
 
どうして以前から、このような付き合い方ができなかったのかと思うが、やはり一緒に仕事を続けている間は、無理だったに違いない。昨日、一月ぶりに顔を合わせ、私も会社の人たちも、どこか懐かしい思いがして、殊更優しい雰囲気が醸し出されたような気がする。
 
そして、皆と共有したこの時間が、私にとってどれほど貴重だったかと、心にじんわりした思いを抱いて帰宅した。その思いは、どの送別会でも感じたことだけれど、昨日は、本当に最後ということもあって、殊更感慨深かった。社内外共に、このような方たちに囲まれて会社員生活を終えられたことが、何より嬉しい。今は、心からそう思える。