照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

カラスのお父さん小枝集めに大忙し

カラスのお父さん(正確には未来のお父さん)は、今日も朝から小枝集めに精を出していた。

(天気も良いし、今日のうちにいっぱい集めておくか)と、住処にしている場所から飛んできたのは、小学校だった。

コンクリートの校舎の側には、大きな木が何本もあって、その幹にツルが巻きついているのだが、うまい具合に程よく枯れている。

カラスのお父さんが目をつけたのは、そのツルだった。クチバシでツルを引っ張ると、カラカラになったツルは、ポキンと簡単に折れる。

そうやって取ったツルを口にくわえたまま、カラスのお父さんは、次のツルを引っ張ってまた口にくわえる。小枝が2本、3本と増えてゆくにつれ、クチバシでツルを引っ張るのは難しくなってゆく。口をうっかり大きく開けでもしたら、せっかく取った小枝を落としてしまう。

そこでカラスのお父さんは、小枝をくわえたままコンクリートの縁までチョンチョンと移動して、(どうしたものか)と、しばらく考えていた。

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小枝をくわえて思案するカラスのお父さん

そして次に、屋上までコンクリートの壁を這っているツルなら、もっと簡単かと引っ張ってみることにした。縁に足をかけたまま、下のツルを引っ張ろうとするが、これがなかなか難しく、上手くいかない。

(一度、小枝を置きにネグラまで帰った方がいいかな)などと、思案しながら辺りを見回せば、自分を見上げている人間がいるではないか。

(あの人間、まさか、俺のネグラを突き止めようとしているんじゃないだろうな)と思ったカラスのお父さんは、(ここは用心しておくに限る。まったく人間って奴は、油断ならないからな)と、コンクリートの縁からヒョイと身体を隠してしまった。

というわけで、お話もここでお終い。しばらく様子を見ていたが、気づかれないようにどこかへ行ってしまったようだ。この時期、カラスのお父さんも、小枝集めで大忙しだ。(*もしかすると、カラスのお母さんだったかもしれない)