若冲は楽しい
若冲展 (チケットより)
入ってすぐ、襖に描かれたカラスのおとぼけな姿が何とも愛らしい。(鹿苑寺・大書院障壁画の芭蕉とカラスの図)糸瓜群虫図の虫たちに目を引かれ、同様に、他のさまざまな昆虫や魚、鳥に動物たちと、次々に見惚れる。
若冲の絵って、こんなに愉快だったんだという驚き。以前行った若冲展よりも、ユーモラスな感じが濃く漂っている。若冲はきっと、自分が描く対象物全てに、愛おしさを感じていたに違いない、と思えてくる。それほど、観る目が優しい。
上段 釈迦三尊像 (パンフレットより)
三十六歌仙をはじめ、人物も皆ほのぼのとしていて、偉そうなところがまるでない。そこがとてもいい。釈迦三尊像にしても、威厳よりは親しみやすさを強調している感じだ。パンフレットの絵からは分かりづらいが、実物の前に立つと、ホワッと力が抜けて、「ねえ、お釈迦さま。ちょっと聞いてくれる」と、気軽に相談事を持ちかけたくなる雰囲気だ。
するとお釈迦さまばかりか、文殊菩薩や普賢菩薩まで、「あいよ。聞いて欲しい亊っていうのは何だい」と、気軽に答えてくれそうだ。しかも合間に、台座の下に向かって、「こらこらお前たち、もう少し静かにしておくれ。今、お客さんだから」と、まるで母親が、幼子たちをたしなめるかのように声をかけそうだ。
左上 虎 中央 群鶏図
そんな楽しい感じの作品たちに、かしこまった見方は似合わない。自分の中で、どんどん物語が膨らんでゆく。群鶏図だって以前は、凄いの一言だったけれど、今回は気持ちが楽しくなっているせいか、個々の鶏の表情を見ていると、それぞれの言葉が賑やかに聞こえてきそうだ。また、この可愛らしい虎になら、世間話の一つもしてみたくなる。
なんてことを考えながら見て回っていたが、実に見応えのある良い展覧会であった。多少なりとも若冲に興味があれば、ぜひ早めに観に行かれた方がいい。ちなみに、会期は5月24日までだ。