照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

お勧めの高島野十郎展ー目黒区美術館

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雪晴れ(絵葉書より)

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積る(絵葉書より)

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サクランボ  (チケットより)

目黒区美術館で開催されている高島野十郎展へ行ってきた。だいぶ前になるが、日曜美術館という番組でこの画家を知り、その直後にここへきたことがあったがそれ以来でずいぶん久しぶりだ。今年は、没後40年ということだ。

岸田劉生の影響が濃厚な、初期に描かれた自画像の前に立った途端(怖い)と感じた。作品のいずれにも気迫が漲っており、正直なところ、このまま観るのは相当魂に堪えるなと思えた。静物画の茶碗にしろ、椿や芥子の花にしろ、すべてに本人の強い思いが感じられ、形を変えた自画像のようにさえ見えた。

それが、アメリカ経由でヨーロッパへ行った後の作品からは、鬼気迫る感じが消えて、ぐっと見やすくなった。カミーユピサロや、ジョルジュ・スーラーを思わせる絵もあって、日本を離れたことで何かが突き抜けたのかなという感じさえ受けた。

但し、後々の静物画からは緊張感がビシビシと伝わってきて、モデルとなった果物たちもさぞ窮屈だったのではと思われた。もちろん果物に感情はないので、そんなことなどあるわけもないのだが、絵を見ているとどうしてもそんなことを考えてしまう。とりわけ「桃とすもも」の前では、リーダーの桃(まったくの私の妄想)が、ジッとしているのに耐えられなくなってきた仲間たちを必死に制している雰囲気さえある。

東京帝国大学農学部水産学科を首席で卒業するも画家を志し、以後独学で画業に専念したという。年表によると、三年次、四年次は、授業料免除の特待生だったということだ。相当優秀だったに相違ないが、その道をあっさり捨てて絵に向かう潔さが、人を惹きつける要因ともなっているかもしれない。

人気の絵画展に比べると、人も少なくじっくり見て回れる。これは、ぜひお勧めだ。目黒駅からは少し歩くが、遠いという程でもない。おまけに入場料は、1000円と嬉しいお値段だ。ぜひどうぞ。