照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

繰り出されるギャグには困ったけれどーそれでも楽しかった『家族はつらいよ』

『家族はつらいよ』に大笑いしての帰り道、この映画に相次いで出てくる古いタイプのギャグは、果たして若い人に受けたのだろうかと気になった。ちなみにこの映画は、三月に公開されている。

半数以上埋まった座席のほとんどが高齢の女性たちで、僅かだがご夫婦もいらっしゃった。隠居の身を謳歌している主人公と同世代と思われる皆さん、思いもよらない妻からの離婚請求という深刻なテーマながら、喜劇だけあってアハハと屈託なく笑っていた。

もっとも山田洋次監督作品なので、寅さんシリーズ同様、テーマ如何によらず、予定調和的ストーリーだろうと安心して観に来たのかもしれない。だからこそ余計に、若い人の反応はどうなのかが頭を掠めた。それとも、初めからターゲットを高齢者においているのだろうか。もしそうだとしたら、ちょっとつまらない。

現代、しかも首都圏(横浜・青葉区を想定)に、あのような絵に描いたような家族って、一体どれくらいいるのだろう。三世代同居で、長男のお嫁さんが奉仕的な専業主婦という設定自体がおとぎ話の世界だ。

両親の離婚問題で家族会議が開かれる日、何も知らない次男が、間が悪いことに結婚相手を連れてくる。席上、家族それぞれから本音が飛び出す様子をじっと見ていた彼女は、さぞ呆れたでしょうと詫びられると、羨ましいと答える。彼女の両親が離婚した時は、母親が荷物を持って出て行っただけで、このようなやりとりはなかったと言う。

暑苦しささえ感じられるこの場面を、若い人が、本心から羨ましいと思うだろうか。ここに、時代感覚の大きなズレを感じた。最後の方で、長男の妻が本音を出し始める辺りから、ようやく現代風になってきたが。

なぜ観に行ったかといえば、俳優さんたちがまだお元気なうちに、映画館でその姿を目にしておきたいと考えたからだ。ここ十年あまりで、あの時行っておけば良かったと悔やむことが何度かあった。映画でも芝居でも、思い立った時に足を運ぶに限る。

ところで、映画の良し悪しはおろか、演技についても門外漢の私がゴチャゴチャ言うのもおこがましいが、主人公を演じられた橋爪功さんはじめ、出演されている皆さんとても良かった。どうだ、面白いだろうと言わんばかりのギャグには困ったが、それを除いても十分楽しい映画であった。