照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

51年前ビートルズのインタビューに成功した日本人女性

ビートルズは今なお世代を問わず好まれ、ずいぶん身近に感じていたものだから、日本公演が50年前だったと改めて言われると、そんな前だったのって少しびっくりしてしまう。自分の年齢を考えればまったく当たり前だが、半世紀経ったというのはやはり感慨深い。

50年前の6/29は、ビートルズが日本ヘやって来た日ということで、NHKラジオの夕方の番組では、星加ルミ子さんをゲストに迎えていた。いろいろなエピソードの中で特に印象深かったのは、その前年、24歳の星加さんがロンドンに赴き、ビートルズのインタビューに成功したということだ。初めて聞く話に、凄い方だなとただ感心していた。

日本で許可がでるのを待っていても埒があかないから、インタビューさせてもらえるかどうか分からないが、とりあえずロンドンに乗り込もうとなったと言うが、今とは時代が違う。1ドル360円で、外貨持ち出しも厳しかった頃だ。

やがて、星加さんたちがロンドンを離れる前日、難物として知られたマネージャーのブライアン・エプスタインからようやく連絡が来てスタジオに向かう時、インタビューに備えて日本から持参した着物を着ていったそうだ。結局それが功を奏して、30分のインタビューの予定が3時間に及んだという。

蓮實重彦さんが、ジャン=リュック・ゴダールにインタビューした時の話が重なった。限られた短い時間内で、如何に相手の気を惹く質問を投げかけることができるか、蓮實さんは周到に準備して臨まれたそうだが、星加さんの場合もまさに同じだなと思った。

30分なんて、あっという間だ。それが、正装してインタビューに臨もうと持参した着物が、メンバーの関心を惹き、予定をはるかに超え3時間にもなった。これは、単なる"ラッキー"ではない。インタビューできるかどうか分からないが、もしチャンスがあればと、様々に考慮を重ね準備した結果が、幸運へ結びついたのだと思う。

"幸運の女神には前髪しかない"とはよく言われるが、どのようなチャンスも逃すまいと準備をして待ち構えていなければ、なかなか掴めるものではない。大概は、過ぎ去ってから気づくのがオチだ。例え、はっきりと分かる形でチャンスが懐に飛び込んできたとしても、何の備えもなければ、上手く活かせずに終わってしまうだろう。

心に願うことがあったら、ただ漠然と待っていても決して叶うことはない。いざその時が来たら、スッと飛び立てるようにしておきたいと、改めて感じた。

ちなみに星加さんは、ビートルズの曲は全部好きだが、一曲といわれたら、「ヘイジュード」とおっしゃっていた。まねするわけではないが、音楽に目覚めるのが遅かった私がビートルズを意識したのも、実はこの曲からであった。ついでに言うと、4人の中で、私はジョージ・ハリソンが一番好きであった。