照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

「英語で読む村上春樹」というラジオ番組は面白い

「英語で読む村上春樹」という番組(NHK第2・土曜日・再放送12時~)があって、時間が合えば聞く事がある。

英訳に続いて日本語の朗読があって、訳文ではなぜその単語が選ばれたのかが解説される。といっても、訳者本人ではないので推測もしくは考察だ。言葉のニュアンスの違いに、聞いたところですぐ忘れてしまう私だが、それでもなるほどと思う。

当然だが、"肉離れを、ミートグッドバイ"(村上ラヂオ2の長島さんのエピソードより)というように単純にはいかない。(*ほんの冗談ですから目を三角にしないで下さい。でもこのセンス好きです)

聞くのはたまになので、ストーリー全体は分からないが、部分的にでも面白い。時々招かれるゲストの話も興味深い。余談だが、少し前ののゲストは都甲幸治さんという方だった。ちょっと気になり、忘れないないようにメモしておいた。それがなんと、先日読んだ『未亡人の一年』の訳者の方であった。だからかと、面白さに納得。訳者の力は大きい。

ところで、これまでは幾つかの話を断片的に聞いたままで、結末までは知らない。だが、今放送されている『パン屋再襲撃』には、急に興味が湧いた。最初、何だかアウトロー的な題名で、私には向かない話だなと思いながら聞いていた。ところが新婚の妻に、『パン屋襲撃』の時の事を話している場面に、ン?となった。

かつて、空腹に耐えかねて相棒と二人でパン屋を襲ったのだが、その店の共産党員でクラッシック好きの主人が、ワグナーのレコードを最後まで一緒に聞いたら、好きなだけパンを持って行っていいというのだ。何だこの奇想天外なアイディアはと気を引かれ、次週もぜひ聞きたくなった。だが放送を待たず、図書館で『パン屋襲撃』、『パン屋再襲撃』を見つけざっと読んでしまった。

土曜日の放送では、講師と進行役の二人で、パン屋を襲った二人は、何個くらいパンを貰ってきたのだろうと推測していた。これにも、エッ?となった。そして、一度に一人3個づつ食べるとしたらと言って、食べた日数(4、5日ということだ)から割り出していたが、個数よりはパンの種類が問題だろうと、思わずツッコミを入れたくなった。だってメロンパンなら、一度に3個は多い。

*(二つの話をまとめた『パン屋を襲う』では、ワグナーを聞きながら店内で食べることになっている。)

それはさておき、人それぞれ、関心の対象というか、引っ掛かるポイントが違うなと、むしろそれが面白い。ここで改めて、本は自由に読めばいいと感じた。自分と人の評価が異なるからこそ、感想をやり取りし合うのが楽しいのであって、国語の試験じゃないのだから、正しい読み方なんてない。

そして本と巡り合うには、時期も大事だ。これまでエッセイはともかく、小説にはあまり縁がなかったが、『パン屋再襲撃』をきっかけに、他の本にも関心が向いている。きっと今が、自分にとっての、ちょうどいいムラカミハルキ刻なのかもしれない。遅れてきたハルキストにはなれないが、なぜ世界中にファンが多いのかが見えてきた。