照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

蛾の目玉模様は生き残りをかけた知恵

昆虫写真家の海野和男さんが、朝のラジオ番組「生き物いろいろ」(NHK第一・10/2放送)で、蛾と蝶について話されていた。「どちらも同じです」という言葉に、だからフランスでは、両方を区別せずに図鑑に載せているのだなと、以前聞いたことに納得した。ちなみにフランスでは、どちらもパピヨンだ。

主に昼飛ぶのが蝶で、夜飛ぶのが蛾ということだ。活動時間帯が異なることにより、それぞれに違いが出てきたという。蝶は昼間活動するため目が良いが、夜間活動する蛾は、目が見えない。その代わり触覚が発達し、匂いに敏感という。

また、蝶の羽はきれいだが、それは仲間にアピールするためだそうだ。一方蛾の羽は蝶に比べると地味だが、外敵を威嚇する役目も果たしているという。とはいうものの、やっぱり鳥に食べられてしまうので、それはある程度有効ということらしい。つまり、鳥が恐れる目玉模様のおかげで、種の全滅は免れたということだろう。

ちなみに、かつて水田などの鳥除けに、目玉模様の風船状の物が使用されていたが、これは、蛾からアイデアを頂いたそうだ。但し、鳥は頭が良くその模様をすぐ覚えてしまうため、同じ物をただ吊るしていても効果はないという。しょっちゅう別の模様に替えておくと効果はあるが、それでは手間がかかりすぎるので、近頃は見かけなくなったということだ。

また、よく街灯などに蛾が集まっているのを見かけるが、蛾からすれば好んで集まっているわけでもないらしい。蛾は本来、月などの光る物に向かって垂直に飛ぶが、もともと自然界になかった街灯では、周りをくるくる回ってしまうという。だが、街灯も今後LEDライトに代わると、集まらなくなるだろうとのことだ。

蛾はその地味な外見に加え、チャドクガのように鱗粉に毒を持つ種類もいることから、人間からは嫌われ者のイメージが強い。だが、話を聞いていると、種を後の世代に継いでゆくため、知恵を絞り抜いてきたことが、いじらしくさえ感じられる。

正直、これまで蛾にはまったく関心がなく、目玉模様すら知らなかったが、ちょっと画像検索してみると、なかなか大したものだ。広げた羽に、ハエそっくりの模様がある蛾もいてビックリする。このような生き残りの工夫は、蛾によらずどの生き物でも共通していることだが、その逞しさに改めて敬服する思いだ。