こんな楽しい絵がいっぱいーこれじゃミロが生まれるわけだと実感 バルセロナ
モンジュイック城まで行くつもりでいたのだが、カタルーニャ美術館に寄ったら、あまりの楽しさにそこで力尽きてしまった。これまでまったく興味がなかった中世の美術だが、マンガチックなタッチがちょっと棟方志功の版画をも想起させて、思いつくままにセリフなど入れながら見て回ると本当に愉快だ。
右上の横になっている人、(いやあ、ちょっと横になったら眠っちゃって、マズイマズイ)と頭をかいているのかな?そんなわけないね。
入場券は12ユーロだが、嬉しいことに2日間有効だ。翌日、モンジュイック城からミロ美術館と回り、再びカタルーニャ美術館に行き、前日購入したチケットを提示すると、入館証のシールと新たに0ユーロと印字されたチケットをくれる。
"ロマネスク美術の分野では世界有数のコレクションを誇り、ピレーネ山麓各地に点在する小聖堂から集められた壁画が何室にもわたって展示されている。しかも各部屋には、作品が残されていた教会内部が再現されており"(地球の歩き方スペイン・P・205より参照)とあるように、その展示には工夫がなされている。
(*ロマネスクとは、10世紀末から12世紀にかけて西ヨーロッパに広がった中世の美術様式)
但し、祈りの場を意識しつつも、その時代の人々が、悪魔や罰をどのように描いたのか、日本の四天王に踏みしだかれる邪気などをも思い起こしながら、興味はついそちらの方にばかり向く。
この日は2度目とあって、中世美術だけを改めてじっくりと見て回る。様々な刑罰の場面に、どの国でも思いつくことは同じだなと思う。だが、当然ながら表現の仕方は異なり、罰を受けている人物の表情がユニークだ。
この絵の左上の人物など、身体をノコギリのような物で切られているのに、(コリャお手上げだわ。まあ、しょうがないか)と涼しい顔だ。右側の上下にしても、自分がされている事に、(あれまあ!どうしましょう?)程度の驚きだ。
左下の煮えたぎる大釜に入れられている二人に至っては、苦痛の表情が感じられないどころか、(さあ、次はどうくる?)と、自分を突き刺すナイフの行方を当てっこして楽しんでいる雰囲気さえ感じられる。むしろ、刑を執行する側に幾分悲壮感が漂っているかな。
『全能のキリスト』というタイトルに表情もキリッと感じられるのは先入観か? 展示も別格で、ガイドブックにも載っているのでこれが目玉のようだが、実は、こればかりかどれもこれも見応えがあって楽しい。
十字架の上でしかたないなというどこか諦めの表情
鼻と口の中心線が微妙にずれている彫刻。このようなやや大雑把?と思われる物はこれまでほとんどどこでも見た事がなかった。だが、これ以外にも同様のがあったので、この時代、あまり細かなことには拘らないのかなとも思う。
この美術館には、校外学習なのか、引率の大人3人に20人くらいの小学生の子たちのグループが幾つか来ていたが、小さな頃からこんな楽しい絵見ていたら、そりゃミロだって生まれるわけだと実感する。
ちなみに、スペインではどこへ行っても校外学習の小中学生、あるいは高校生に出会った。サラゴサの博物館では、備え付けの簡単な衣装を着けた子ども4人が、教師に教えられたセリフをそのままに、クラスメートを観客に寸劇までしていた。ただ見て回るよりも、ずっと印象に残るだろう。狭い通路なので、私も終えるまで観客になって見ていた。
スペイン楽しいよ!といっても、既にバダホス(スペイン)から12キロ離れたエルヴァス(ポルトガル)に移動している。このブログ記事も、訪ねた順番ではなく、初めての地に降り立った興奮や感激やらが少し冷めた後、折々面白く感じたことや考えたことを時系列ではなく、順不同でお伝えしたいと思う。