照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

ブリューゲル(父)の絵を見にデスカルサス・レアレス修道院へ〜マドリッド

初日にプラド美術館とソフィア王妃芸術センターに行ってしまったので、もうマドリッド観光は終了かなと思いつつガイドブックを開いたところ、気になる美術館が幾つかあるではないか。日帰りでトレドやセゴビアに行っている場合ではないと、回る順番を検討し始めた。

 

ブリューゲル(父)の絵に惹かれ、朝一番に、デスカルサス・レアレス修道院へ向かった。何しろプラド美術館では、ブリューゲルの『死の勝利』が修復中で見られなかったという残念な思いがある。見られる時に見ておこうと、つい気合いが入ってしまう。

 

場所は、プエルタ・デル・ソルから近く、位置的には、エル・コルテ・イングレス(デパート)の裏辺りなので解りやすい。30分位前に着くと、修道院の前の通りに男性が一人立っているだけであった。どのくらい混むんだろう?出遅れたかなと急ぎ足で来たのに、アレッと肩透かしに合ったような感じだ。

 

ここにただ立っているよりは、どこかで朝食を摂りながら待つことにしようとすぐ近くの店に入った。店内ではほとんどのテーブルに、チューロスとチョコラーテがある。これを食べる予定はなかったのだが、私もつい試してみたくなって同じ物をお願いする。食べ始めて間も無く、口中の甘さに閉口してオレンジジュースも追加で注文。搾りたてのジュースが喉に嬉しい。

 

5分前になったので再び修道院まで行くと、チラホラと人も集まりだした。10時きっかりに扉が開き受付へと進む。ここでの見学はガイドツアーのみで、個人で見て回ることはできない。そのためチケット購入時に、ツアーはスペイン語と英語のどちらにするか希望を聞かれる。

 

スペイン語だと10時半からだが、英語は11時だ。どのみち、どちらにしても私の耳には音楽と一緒だ。それなら早い方がいいと、スペイン語をお願いして、開始まで待合室で待つ。

 

(多分)25人位が1グループで、絵画等の説明をしてくれる人が先頭で、監視役の人が最後尾に着く。(写真撮影は不可)大階段を上がりながら、横や天井にびっしり描かれたフレスコ画の見事さに、私も口を開けたまま、ただ感嘆するばかり。

 

説明がスペイン語とはいえ、同じ聖人の名が何度も出てきたり、タペストリーの前ではルーベンスの名が出てくるので、下絵に使ったとかの説明だろうとの見当をつけて聞いていた。

 

フェリペ4世は、聞くまでもなく肖像画を見ただけですぐ分かる。たまにガイドさんと目が合ってしまうのだが、そんな時は、いかにも熱心に耳を傾けている見学者であるかのようにしっかり頷く。質問されないので安心だ。

 

ガイドツアーもいよいよ大詰めになって小部屋へ入ると、目指すブリューゲルがあった。でも、果たしてこの絵がそうなのか、私の勘違いということもある。他の絵の説明は聞かず、ずっと絵の真ん前にいて、ガイドさんの口からブリューゲルの名が出てくるのを待った。

 

何と小さくアッサリと言うではないか。ルーベンスなどは、やや離れたところでよそ見をしていても耳に入ってきたというのに。ここは、皆さん聞き漏らしのないように、はっきりくっきり言った方が親切というものだ。

 

と、私が熱く思ったとて、こればかりは好みの問題で、別に誰が描いた絵でもいいよという人だっているだろう。ある方など、ガイドさんから発せられた聖人の名にいたく感じ入ったようで、その名を何度もつぶやきつつ絵を見ていた。

 

ほぼ1時間ほどのツアーは、あっという間に終了してしまった。もう一度、気に入った絵だけを一人で見て回りたい気分だがそうもいかない。でも、張り切って出かけてきて良かったよと、十分満足して修道院を後にした。次は、国立考古学博物館だと、意気揚々とメトロの入り口に向かう。